タッグチームでのクロージングテクニック (前例タッグ)

もう一つのタッグチームによるアプローチは、前例タッグです。何度も、その効果が実証されている手法です。

ある営業マンがクロージング不可能な状況に追い込まれていて、もう少しで、すべての武器を使い果たしそうな状況にある時(決して使い果たさないでください。でないと、タッグパートナが困りますから)、もう一人の営業マンを呼びます。

このタッグをより効率的で信憑性のあるものにするには、営業部長や補佐役ではなく、担当レベルの営業マンと組みます。前例タッグでは、プロスペクトに対して別の営業マンが2-3週間前に似たような問題に遭遇し、関係者全員が満足できるところまで、難問を解決したことがあることを伝えます。ここで言う問題とは、もちろん売り込みに対する反論のことです。

同じ苦労に遭遇し、その解決策を見出したばかりの営業マンがいることがありますが、そういう人が見つかれば、いっそう有利です。

もし見つからなければ、第一にクロージングが得意な人、次に機転が利く人を選ぶのがこつです。クロージングを速攻で決めることで有名な人、ボールを拾ったら即座に投げ返してくれるタイプの人、最小限の会話のやり取りで役目を果たしてくれる人と組みましょう。このことは最重要です。あなたは既に相当な時間を費やしてしまっており、これ以上おしゃべりで無駄にできる時間はないのです。

この「前例タッグ」では、少し巧妙な口実を使いますが、営業マンとタッグを組む相手との協力とチームワークが必要となります。このタイプのクロージングでは、あなたと同等の営業力があり、お互い知り合っていて、いっしょにうまくやれて、会うのが楽しみなくらいの人を選択してください。なぜならば、彼が引き継いでやってくれている間、あなたは、じっとしていなければならないからです。前例タッグであなたはパートナーの引き立て役に回り、彼がクロージングを完了させます。

もう一度言いますが、避けられるものならプロスペクトを1人にしてはいけません。プロスペクトが防御を固める前に、パートナーを引き入れましょう。

パートナーが現れたら、次のようにやっていきます。

「ジム、2週間前の商談覚えているかい。目をつけていた家具を買うために持っていた有価証券を解約したがっていたお客さんとの取引だよ。確か在庫の中に一つしかない種類と色の家具だったよね。」

「君はそれを納入したけれど、どうやって商談をまとめたんだよ。証券の現金化には、確か1ヶ月もかかったのに、どうして他のお客さんに先に買わずに済んだんだ。」

ここではパートナーにどのポイントでヘルプを必要としているかのヒントを与えています。直接的な言い方で頼んではいませんが、プロスペクトが現金を必要としていること、その品物が最後の一つで、次に彼が戻ってきたときには売れてしまっているかもしれないということをほのめかしているのです。

「あーあ、ピーターズさんがお買い求めになったやつだね。覚えているよ。好感がもてる独身の方だった。緑の色合いのものを探しておられたね。彼のアパートにはそれしか合わなかったからね。」

プロスペクトの反論に対抗せずに、何気ない感じで言うのです。次にその反論(今すぐには買えない理由)を重要視していないような態度をとります。二人がそんな理由で先延ばしにしていることが馬鹿げていて可笑しがっているように見せかけます。穏やかに、紳士的に

「問題ありませんよ。5分で簡単にその問題を解決する方法をお教えします。」

「ジョーンズさん、あなたは有価証券を現金化してこの家具をお求めになろうとされているのですね。」(この時点でパートナーは有価証券を売る代わりに一石二鳥を狙って融資の話を紹介しても良いし、そのまま、普通の売り込みをしてももちろんかまいません。)

「融資は受けるのはもういいよ。すでに、2社から借りていて、月々の返済のせいでお金が残らない。だから返済してしまおうと思っている。」

「おっしゃることはよくわかります。ジョーンズさん、月々の支払いが好きな人などいません。買い遅れないように、お金の問題をどう処理するか、今すぐ説明させてください。このセットを他の人が買う前に手に入れてしまいましょう。私どもは今すぐこの品物に売約済のマークを付けてしまうことができます。

ここで言葉上のテクニックが入ってきますが、非倫理的でも不適切でもありません。ただプロスペクトに、この男はこの会社の他の誰にもできないことをやろうとしていて、それを自分のために特別にやってくれていると思わせるのです。

「ジョーンズさん、私どもは、こういう状況の方のために例外的な手配をかけるができます。どなたにでもさせていただいけるわけではありません。」

そして、30日で1パーセントの繰延手数料(金利)さえ払えば、当座勘定を利用して後払いが可能なことを伝えるのです。もちろん彼がこの提案に躊躇する(迷う)場合には、話はまだ終わっていないと穏やかに言います。

「実はジョーンズさん、この話の良いところは、この1ヶ月の繰延手数料と同じ額を売値から引かせていただき、家具の代金を同額にできるというところなのです。一つのやり方が、すべてではありません。」

このタッグパートナーは、あなたにも同じ提案ができたであろうことは言いませんでした。彼はプロスペクトに、それができると言っているのは彼(パートナー)なのだと思わせました。彼は自分があなたより高い地位にあるとも言いませんでした。実際、そうではありませんでした。でも、彼はプロスペクトにそう思い込ませたわけです。

プロスペクトは自分以外の客がやってもらえないようなことをやってもらえるのだと考えました。彼が他の重要顧客に最近やってあげたことと同じことをやってもらえるのだと考えたわけで、そのことが功を奏したのです。

前例クロージングでのパートナーは、しばしばあなたを部下のようにあつかったり、おとしめたりしますが、恩恵を受けるのはあなたなのです。彼はあなたが新米で自分は円熟したプロのように演出することもできます。その日のあなたは考えが足らないと一言いうこともできます。あまりにも当然の解決策があるのに、わざわざ自分の手を煩わしていることにいら立っているように見せることもできます。彼には多くの選択肢があります。

あなたが座っている場所からすることは、それに協力するということです。彼がやろうとしていることに合わせて演技しなさい。もし彼がクロージングのために、あなたを無能扱いしたがっているのが分かったなら、無能者のようにふるまいなさい

何よりも彼にボールを持たせることが大事です。口をはさんではいけません。そうしていいのは明らかに彼がそうしてくれと合図を送って、しゃべる機会を与えている場合のみです。

<マイクから一言>
頭が良く、機転の利く同僚を友人に持っていることは幸運なことです。同じ会社の中の同僚の営業マンたちとあなたは成績を競い合っているのかもしれませんが、良きライバルであり、良き友人であるべきです。同僚のクロージングを助けても、あなたのインセンティブが増えないようなシステムの会社であっても、同僚に貸しを作っておくことは良いことです。人間には、何か恩を受けたら、いつかお返ししたいと思う本能のようなものがあります。ギブアンドテイクと言うと欧米的なドライな考えだと思われがちですが、それは違います。テイクしたことに対してギブで返す行動は、人間の本能から来ています。その性質は、返報性と呼ばれます。逆に言うと、一方からのギブだけが続いてしまうと、その関係は、いつか必ず終わってしまいます。それは、人間の本質であり、決して、ドライな考え方だけが原因になっているのではありません。常日頃から、見返りを期待しないで、人に貸しを作っておきなさい。いつか、返ってきます。

話は変わりますが、もうすぐ品物が無くなるという不安を与えることの効果は絶大ですが、諸刃の剣であることも忘れてはなりません。セールステクニック全般に言えることですが、嘘をつくのは厳禁です。それを隠すために上塗りに上塗りを重ねることになりかねません。真実をベースにすべきです。嘘をついていないという事実は、芝居かもしれないとプロスペクトが感じ始めたときの防御壁になります。

クロージングするうえで不利な情報を、言わないでおいたり、強調しないでおくことは、営業マンとして、時には必要な行動です。しかし、買った後で客が怒り出すような隠し事は、あなたの信頼を失うことになります。不正直なセールスばかりに染まっていると、いつか、多くのプロスペクトがあなたから離れていくことになるでしょう。会社やあなた自身の悪評判の原因にもなります。

買った後の満足度が高くなるような努力をクロージング前からしておきましょう。技術者や製造部門は、期待以上の製品を作るのが仕事です。営業マンであるあなたの仕事は、プロスペクトに「期待以上の買物をした」と思ってもらうために、細心の注意を払いながらコミュニケーション・スキルを使うことです。クロージングを急ぐあまり、実体以上の説明をしてしまうと、客の満足度は、「期待以下」になってしまいます。あなたが、トップ営業マンになるためには、多くの顧客に「期待以上の買物」だったという気持ちを購買後に感じてもらわなければなりません。そうすれば、紹介やリピートがどんどん増えていくでしょう。クロージング前は正直に、クロージング後は期待以上のフォローアップをしてください。あなたの売上は必ず伸びます。

「期待以上」という感覚は、どんなものなのでしょうか。それには、少なくとも軽い驚きが伴います。それがあって初めて、顧客はあなたやあなたから買った商品のことを他の人に紹介したり、伝えたくなるのです。「期待通り」だけなら、口コミの効果は期待できません。常に、「期待以上」を目指してください。