個人客や家族客へのクロージング

<個人客へのクロージング>

プロの購買担当者のマーケットから一気にジャンプして、全くの素人、若者に焦点を当ててみると、プロスペクトそれぞれの分類グループに応じたやり方でクロージングすることのメリットが良くわかります。

法人バイヤーたちは、売込みへの抵抗をこちらに感じさせることが、ほとんどありません。なぜかと言うと、彼らは「自分が欲しい」のではなく、購買行為に私情を挟まないからです。購買することは、彼にとって、すべてビジネスであり、たどり着くところは、会社が必要とするものを必要な時に買うだけのことです。

一方、購買の世界への新参者、例えば若い消費者が、自動車や船、自宅や保険契約などなどを初めて購入する場合は、最も高いレベルの「売込みに対する抵抗」を示すでしょう。また、途中から、彼の妻、ガールフレンド、友人、時には会社の上司までが、彼に「注意しなさい」と警告することが多いのです。彼らは「セールスマンと言うのは抜かりなく客を利用するぞ」と入れ知恵します。「他のいろいろな店を見てから買うように」とも言っているでしょう。値段を比較、ローンの条件、保証条項、契約書の詳細、さらにはセールスマンが胡散臭くないか、等々、とめどなく注意を促して来ます。あまりに注意やアドバイスが多すぎて、買い物客本人は初めから恐れおののいています。

いわゆる「レンガ造りのよろい」は、それら「良識ある人々からのアドバイス」により注意深く積み上げられていて、その上、きっちりモルタル塗りまでされています。おかげで購買者は、初めて営業マンに会った時には恐怖におびえ、皮をはがれるくらいに感じています。この恐怖感、騙されるのではないかという怯えも、新米の個人客用に適したルールに従えば、それら自体がクロージングを容易にするのです。

 

<信頼を勝ち取る>

彼の恐怖感、つまりレンガ造りのよろいを取り除くために、何をしなければならないのか。それは、信頼を勝ち取ることです。彼が持つ恐怖感には根拠がないこと、周りから言われたアドバイスはどれも正しくないことを理解させるのです。それさえできれば、いとも簡単にクロージングできます。ちょろいものです。

警告の言葉が一つあります。前章で述べた「べからず集」はこの種の購買者に、さらによく当てはまります。彼は新米の購買者で経験に乏しく、騙されるのではと警戒しています。言葉の間違った使い方ひとつで、注文を失います。

この種類の購買者の「レンガ造りのよろい」は2種類のうちどちらかです。1つは、声が大きいタイプです。「私を騙せるなんて思うなよ。事前に十分に警告を受けているのだから」とか「ゆっくりと詳細まで検討するつもりだ。付け入る隙なんて与えるものか」などと思っているタイプです。

このタイプは通常より大きな声で話すことが多いのです。感じが悪いとまで行かなくとも、無礼な場合もあり、内心恐れていますが、タフガイを装うことで、手慣れているふりをします。

彼の青臭さ、タフガイぶるところは、それ自体がヒントになるので、気にしたり、腹を立てたりしないことです。相手にしゃべらせて、自慢させてやりなさい。「自分は、いろいろなことを聞いて知っているので、売るのがたいへんな相手だぞ」と言いたいのです。しゃべれば気持が落ち着いてきます。自分の必要な物を買うという行為が、結構しんどいのだということを認識し始めます。特に、あなたが落ち着いた態度で、感じよいふるまいで、決してグイグイ売りつけようとしないことがわかってくると。

 

<同化>

いったん、彼のテンションが下がったら(結構な時間が必要かもしれないが、これは価値ある時間です。)あなたは彼と同化(identify)する作業に入ります。そうすることで、彼が身にまとっている「レンガ造りのよろい」を取り除くのが目的です。あなた自身と彼を「同化」することに成功したら、急速に信頼を得ることができるでしょう。

例えば、あなたの年齢が45~50代、買い手の若者は18~28歳くらいとします。すると、あなたは彼の父親の年代になる。これが、あなたが「同化」できる領域なのです。彼とその父親との関係、父親は存命か亡くなったのか、彼の持つ父のイメージなどを把握します。

もしかしたら、伯父、あるいは勤務先の社長、親の知り合いかもしれません。大概、誰か年上の人物で、尊敬し、信頼している人物が一人はいるものです。

それが誰なのかわかったら、その人とあなたを同化していきます。知ったかぶりで強がりを言いながら、彼は知らず知らずのうちに、ヒントをくれるかも知れません。

「あんたたちセールスマンの扱い方は父さんに教えてもらっているよ。」

「あんたたちがどうやって車を売りつけるか、上司から聞いているよ。」

このような発言がヒントです。その人への信頼、あるいは、その人のアドバイスに耳を傾ける気持ちがないと、このように語るわけがありません。

彼に影響力を持つ人物が誰かわかったら、次はどんなアドバイスを受けたのかを探りましょう。その人物は実際何をアドバイスしたのか、何を彼に言ったのか、どんな意見を持っていたのかを聞き出します。その後は大変シンプルです。助言した人物の考えに同意し、最高の助言だったことの確証(裏付け)を与えてあげます。

「叔父が貯蓄と融資機関への投資に重点を置いて調べるべきだ、と言うんだ。この地域で何が成長しているか、に注目しろって。そしたら間違いないって。」

 

「ベイリーさん (本人が望まないうちから親しげにファーストネームで呼ばないこと。若者が持つ「恐れの気持ち」、「売り込みへの抵抗」は自分が若くて経験が乏しいことに由来する。あまりこちらから親しく接するのは逆効果)、おじ様は賢い方ですね。的確なアドバイスをくれる人がそばにいて、あなたは幸運ですよ。おじ様はまだ現役ですが、それとも引退されているのですか。」

「伯父は海軍大佐ですよ。僕くらいの年のころから投資を始めていて、何を買うべきか、や健全な投資ポートフォリオのありかたも、騙されない方法も熟知しています。」

「そうでしょうね。本当にあなたは幸運ですよ。おじ様が貯蓄と融資機関に着目せよとおっしゃったのですね。こちらの資料を見ながら、おじ様のおっしゃったことを確認しませんか。多分、おじ様はこういったものをお見せになったと思うのですが...」

「ああ、そうそう、フレッドおじさんは、まさしくこの事を言っていたんだ。父の遺産の4割くらいをつぎ込め、って。そう言えば、お宅の証券会社も、伯父が勧める会社うちの1つだったんだ。伯父と同じ考え方をよく分かっていて、何年も伯父の投資を成功させてきた会社なんだよね。」

先ほどまでの強がりや恐れは急速に消え去ります。営業マンが、彼の助言者が伯父であることを突き止めて、その人物の投資方針や経験に同調(同化)しながらセールスをしたかです。まもなく、その若い客は、「レンガ」を取り除き、信頼を示して、投資商品を契約することになるでしょう。

 

<物静かで穏やかな、疑い深いタイプ>

次のタイプの若者には助言者はいません。だからミスをしないために慎重に一言ずつ確認し、詳細を検討します。最初のステップとして、誰かアドバイスをする人物がいるかどうかを確認することが重要です。そのやり方は色々あります。一番簡単なのは、ストレートに質問することです。

「ベイリー様、こういう重要なことを相談できる方はいらっしゃるのですか。」

「残念ながら、誰ももいないのです。母はいますが、投資のことはわかりません。実は父の遺産を母とボクの二人でどう運用したらいいか、と言う相談なのです。母はボクに頼りきりなので...」

「そうですか、それは偶然です。実は私の兄も3年ほど前に亡くなり、義理姉とあなたくらいの年頃の娘が残されました。兄は何千ドルか保険と貯蓄で残したので、なんらかの投資プログラムを段取りして欲しいと相談を受けました。」

 

<心の空白を埋めて、信頼を得る>

「実は、初め少し躊躇しましたよ。親族相手ですからね。でも、思い直しました。親族だからこそいい仕事をしてあげて、幸せになってもらうべきだと。他人様のお世話を毎日しているのに、親族に対しては腰が引けてしまうような気持ちは振り払うべきでした。それじゃこの仕事に失礼だ。

「それでこういう形にして、さらに優良株を加えて...今もうまく行っています。ところで、ベイリー様よろしければ私の方で...」

「いやいや、トミーと呼んでください。あなたは私の父親くらいの年代だし、今後取引をするのですから...」

若い世代の顧客に対しては、まず信用を得ることが肝要です。彼がまとっている「レンガ造りのよろい」が他人からの助言であれ、注意深さであれ、まずは信用を得ることがクロージングへの近道です。

信用を得ることで、おまけの利点もあります。若い顧客はうまく取引ができたことで気を良くして、自分が信用する人物に友人を紹介してくれます。また、若いということは、今後の長年取引を出来るということなので、年を重ねて収入が増えると共に取引額も増大するはずなのです。

苦労して手に入れた信用を乱用したり裏切らないこと。

 

<経験豊かな個人客>

個人客分類のもう1つは、もう少し年上で、人生経験も豊かな、しかしながら家長ではないし、法人でもない、自分の為に購買するタイプです。では、なぜこのタイプを前述の「新米タイプ」 と同じ分類にするのでしょう。それは、彼が自分の為だけに購買するとしても、誰かの意見は聞くタイプだからです。

この人物に対しても、個人的な信用を得ることが重要です。言い換えれば、「妻に相談する」とか、「上司にこの見積を見せる」と言った場面は想定する必要はありません。但し、彼の「助言者」とは戦う必要があります。

覚えておくべきことは、このタイプから信用を得ることは、一段と難しいということです。ビギナーでない分こちらの言うことをすぐには信じないし、こちらの商品がベストである、ということを納得しない限り、簡単にはクロージングできません。

この人物は「個人客」のグループに属し、自分で決断をします。しかし、前述のビギナーと同じように、誰か他の人のアドバイスを聞くか、あるいは、少なくとも考慮に入れるタイプです。だから、一体誰がその助言者なのか、本人とどういう関係なのか見つけて、その人物と同化することが重要です。

 

<私には関係のないことだが...>

営業会議が終わった直後に、同僚のディックが見つけたプロスペクトは、前述の題材に当てはまっていました。我々は、プロスペクトが自分の助言者を同席させて、購買に臨む場合の最適な対応について検討しなければなりませんでした。

ディックは、営業マンとしてはまだ新人でした。今から思うと彼はこの助言者の存在が恐れていたのだと思います。こういった「助言者」は知ったかぶりで、大言壮語し、営業マンを駆逐すること目的していることが多いという事実について、社内で議論したことがあったからです。

残念ながら、新人のディック には、その対処の仕方をまだ教えていませんでした。だから、このプロスペクトが上司を連れてやって来た時はビクビクしていたのです。

ただ、彼にとって幸運なこともありました。こういった助言者にどう対処するかを実地で学べたこと、また 助言者(この場合はプロスペクトの上司)とうまく同化することで、クロージングに持って行く方法を経験できたことです。

そのアドバイザーが繰り返し、「アダムス 私には関係ないことなんだけどね、他も見たほうがいいじゃないかな。」と発言するので、ディックは私に助けを求めてきました。私は商談室に入り、自己紹介し、ディックのような新人で、研修期間中なので、初めの数週間はベテランがアシストすることを伝えました。

「アダムスさん、あなたは4ドア・オートマチックの小型V-8にご興味がおありなのですね」

「そうなんですが、(上司の)ピアソン氏が言うように、決める前に他も見たほうがいいのかなと思っています。」

そこで私はピアソン氏に向かって言った。

「ピアソンさん、購買のやり方に通じてらっしゃいますね。特に自動車は高額ですし、失敗を犯しやすいですから。あなたのような方がおられて、アドムスさんは幸運な方ですね。」

「まあ、私には関係のないことだ。しかし...」

「いえいえ、そうおっしゃらないでください。で、今日は、えっと、お二人はお知り合いですか。それとも...」

「彼は私の部下です。」

「なるほど。車を買う時も重要なアドバイスを求められるのですから、仕事場でも、彼が如何にあなたを信頼しているか、よくわかります。」

「それで、ピアソンさん、お出しした見積もりはいかがですか。フェアな内容だと思っていただけますか。ご自分に関係ないなんておっしゃらないでください。アダムスさんに最適な助言をして差し上げてください。私どもも、最高の買い物をして頂くよう努力させていだだきます。」

「そう言われるなら、その見積のここの数字をもう少し削ってもらって、タイヤをホワイトウォール社にものに、変更してもらえるのかな。」

ここまで来たら、後は価格や商品を選定についての意見の一致点を見つけるだけで、クロージングに持ち込めます。

プロスペクトが上司を連れてきたということは、すなわち、日常的に彼は上司の意見やアドバイスを受け入れていることを示しています。多分、いつも価値あるアドバイスを受けているのでしょう。明らかに、そのように見受けられたら、それを言葉で伝えましょう。

少しお世辞も入れて...助言者に注意を集中してください。クロ―ジングは簡単に進みます。

経験豊かな個人客が一人で来店した場合でも、助言者を突き止めるのは簡単な作業です。その人物を褒めて、その人物に同化し、「レンガ造りのよろい」が崩れ落ちるのを見てください。個人客で、友人、知り合い、家族など一切誰にも相談しないという例はほとんどありません。ただ、その人物が誰で、どんなアドバイスを受けたのか突き止め、その上でその人物を褒めて、同化しなさい。残りの作業は楽なものです。

 

<マイクの一言>

ここで、「同化する」という耳慣れない言葉を、もう少し分かり易く説明します。原文では、Identifyとなっています。研究社の英和辞書を引くと、同一であることを確認する、同一とみなす、仲間に入れる、結び付く、同一化するなどの定義が書いてあります。最もぴったりくる定義は、仲間に入れる(仲間にする)ではないでしょうか。別の言い方をすると、相手を否定せずに同じ仲間になる(相手に溶け込んで一体化する)、それを同化という言葉で訳させていただきました。

以前の章では、プロスペクトと同化しきれなくて、逸注を繰り返している営業マンや、逆に、プロスペクトに自分と同類だとみなされやすい営業マンに交替することで、成約率を上げた例がありました。

ここでは、プロスペクトが連れてきた助言者に同化することで、プロスペクト自身とあな営業マンが同化している例が語られています。

同化して、同じ仲間として認められるためには、相手がどんな現実感(リアリティー)を持っているかをくみとって、それを認めるということが重要なのです。上記での助言者の現実感は、「部下に最高の買い物をさせてやりたい」でしょうか。それよりも、「自分は上司として部下に頼りがいを示さなければならない」とか「自分は部下のアダムスより、経験があり、もの事を知っているということを分からせたい」のような現実感の方が、はるかに大きそうです。

トップ営業マンになるためには、プロスペクトの本当の現実感を見抜き、それをビシッと認め、それを適切な言葉で伝えることで、プロスペクトと同化し、お互いの親近感を高めるテクニックが必要不可欠です。

以前、1章でコミュニケーションの積み重ねと親近感と現実感は、三位一体であるというお話をしました。もう一度、<マイクの一言>に書いてあることを復習し、日々の営業活動にいかしてください。

 

<独身女性個人客のクロージング>

セールスマンと言うのは意識的かどうか別にして、好みのプロスペクトのタイプがあるものです。私の場合、それは「未婚で自活している女性」だ。年齢は関係ありません。このタイプを独立した分類にしたのには理由があります。

一般的な個人客に分類されそうなものですが、このタイプははっきりと他とは違います。それには理由があります。価値あるプロスペトですが、多くのセールスマンは残念ながら尻込みします。

他人のためではなく、自分の為に物を買う女性プロスペクトは、セールスマンが文字通り「売る」ことに専念できる相手なのです。営業のプロなら熟知している技を駆使できる相手ですし、個人差や性格にもよりますが、クロージングが楽しめる相手でもあります。

お世辞を言えば受け入れてくれるし、美への欲求への抵抗力がありません。共感もしてくれるし、強引では無いことのほうが多いのです。女性客に物を売ることの本当のすばらしさは、女性の持つある特徴にあります。老若、既婚未婚を問わず、金持ちかどうかにかかわらず、彼女らは自分が何を欲しいのか、滅多に分かっていません

女性客に物を売るのは、営業マンの楽しみになり得ます。セールステクニックのすべてを駆使することができます。まず、ニーズや嗜好を分析し、ちょいとお世辞の一つも入れて、実用的なアドバイスをしてあげれば、直ぐになびいてきます。

私の友人が、最近、大都市圏で旅行代理店を開業しました。働く若い女性の旅行市場が、大変大きい地域です。

「この事業では様々な顧客層に出会うが、私は働く女性に焦点を置いている。彼女らは自分たちの稼ぎ、プラス多少の貯蓄を最大限有効に生かしたいと思っている。その事をいつも念頭に置くのさ。」

「若い男性と出会って楽しめるような華やかな場所を旅行先に選ぶ女性もいる。一方、知性派は歴史や芸術に興味があり、いい男と巡り合いたいと思うグループと同じくらい自分たちの欲求を意識している。」

「私が本当に楽しいと感じるのは、これら女性客に対して、私は売ることができることだ。私の知っている限りの営業テクニックを駆使した上で、誠実に取引をして、一番いい買い物をしてもらう。」

「私の場合、女性客に物を売ることは、特にクロージングに際に、自分の営業テクニックを磨ける機会でもあるんだよ。いくら持てる営業テクニックを駆使しても、簡単な(楽勝の)女性客はほとんどいない。なんせ自分の稼ぎと2週間の休暇をつぎ込むんだ。彼女らにとって、おだてられるのも悪くないし、華やかなのも好きだ。きっと楽しめますよ、と言ってもらいたがっている。」

「しかし、彼女らが一番望むのは、私の言うことが信用できることだ。彼女らには 何がベストかを教えてくれる夫も父親もボーイフレンドもいない。それを私にしてほしいと望んでいる。こうやって、私は6桁の売り上げを築き上げたし、毎日をエンジョイしている。」“

 

<ファミリー客>

購買者で一番大きなグループはファミリー客でしょう。代表は夫で、大きな買い物はすべて彼の責任です。ほとんどの場合、彼は妻に相談するでしょう。しかし、最終決断は彼が下します。新しいストーブの大きさや、新しい乾燥機の置き場所、あるいは次に契約する保険の種類などを、妻に相談はするでしょうが、そこまでです。決断を下すことになれば、家長である彼の仕事だし、その後の責任も彼が持つことになります。

とは言っても、他の家族は放置される、と言うわけではありません。妻や子供たちも意見は言えるし、最終決断は下しませんが、影響を与えることはできます。家族の存在を無視して売ろうとするセールスマンは近眼的と言えるでしょう。

営業マンの多くはこのアプローチをさらに一歩進めて、今回の購買が家族のだれに一番影響を与えるかを見極めます。例えば、先ほどの乾燥機の例で言えば、主婦が一番頻繁に使うことになります。洗濯物の出し入れの容易さや、自動運転、糸くず収集装置などを強調することが賢明でしょう。支払プランや故障の少なさ、保証や故障時の保険などは夫に説明するのです。

 

<ファミリーを分ける>

10代の子供がいる家庭の場合、車やボートのセールスなら、子供たちに売り込むとうまく行くことが良くあります。その場合、資金面、安全面、維持管理などは両親に説明をすることになります。

つまりここで言いたいのは、最終的にクロージングに持って行くために、家族のどの人物に焦点を当てて、味方にすることが効果的なのかということです。

「パパ、ビニール・インテリアやバケットシートがいいに決まってるよ。」

「パパ、18フィートのBluestreak を買うならSG80が最高のモーターだよ!」など子供たちにねだられて、聞いてやらない父親は、まずいないでしょう。

あるいは奥さんに、「高いのはわかっているのだけど、4口のガスコンロで、銅のフード付きで、自動クリーニング機能のオーブンが付いていたら最高だし、実用的ね”

」と言われたら夫はどうするでしょう。

妻や子供たちにそうやってねだられて、拒絶できる人は少ないでしょう。一家の主の生きる目的、働く目的、苦労する目的は、家族を幸せにし、その幸せを持続させることです。彼がそれを望もうが望むまいが、です。それを覚えておいてほしい。

 

<ファミリーの中の一人に物を売る>

セールステクニックについて何冊かの本を書いている私は、売る物によって家庭の中のターゲットを分けています。保険商品、株式、債券、医療などは一家の主に売り込みます。なぜならこう言った類のことは夫の分担ですし、意識も高いからです。妻は家具や家電、その他家で使うものが担当です。ボートや車、プールなどいわゆるぜいたく品は子供たちや妻に焦点を合わせるべきです。そして家なら家族全員。ぜいたく品を売るときは、さらにその要素を分けると効果的です。例えば、子供たちにアピールする部分は子供たちに、妻が喜びそうな要素は妻に、そして現実的な側面、例えば価格や支払方法などは夫に、というふうにです。

不動産業を営む友人は、あるプロスペクトが昇格を機に、今よりいい場所に家を購入する際に、どんなステップを踏んで、契約のクロージングをしたかを教えてくれました。

彼はまず、プロスペクトの現在の自宅を訪問しました。ローンも完済したので、もう少し大きな家に引っ越したいという希望でした。曰く、「今と同じ地区で、値段もあまり高くない物件を希望します。56歳にもなってまたローンを抱えたくないので。」

彼は街の郊外にできた、おしゃれな開発地の物件を見せて、「どなたかご興味のある方をご存知なら、と思ってお持ちしました。」と説明しました。一家は車でとりあえずその物件を見に行くことになりました。

物件を見せる時、初めから値段や支払い条件、保険の話はしません。まず17歳の息子に手裏庭にあるテニスコートを見せ、15歳の娘にはマメの形のプールと脱衣所を見せました。

さらに妻には洗濯部屋、メイドルーム、フード付きのガスコンロ付きオールステンレスのキッチンと大型フリーザー付きを見せました。

また、今の家で蔵書が収納しきれず散らばっているのを見ていた彼は、夫に壁いっぱいに本棚のある書斎を連れて行き。そこの窓からは、外の渓谷が一望できたのでした。

夫が、「すごく素敵だけど、私たちには贅沢過ぎる。」と口にするたびに、友人は否定せずに、「一応ご覧いただきたかっただけです。」と伝えました。

その上で、もともと見ることを決めていた物件を見に行きました。いい物件だし、予算内でしたがテニスコートはありませんでした。近所の高校に行けばテニスコートはあるにはありました。プールも付いていません。近所の学校にはありました。化粧室も大型冷凍庫も完備されていませんでしたし、ガスストーブも新品ではありません。ただ、高校とバス停には近かった。

 

<家族それぞれがクロージングに貢献>

一家全員が買いたいと思ったのは2軒目の家ではありませんでした。みな、欲しいものは先に見てしまっていました。クロージングに持って行くために友人は、今の家の下取り価格を査定してもらうことを提案しました。

娘は歓喜の叫び声をあげ、息子はテニスコートの端にバスケットボールコートを作るんだと言ってはしゃぎました。それで夫の不安や恐れは消え去ってしまいました。妻は大型冷凍庫にどれだけたくさんの肉を冷凍できるか計算し始め、夫はこれまでより、いい地域に引っ越すことに「とうとうここまでたどり着いた」感を高めました。

ぜいたく品をファミリー客に売るときは、資金繰りやテクニカルな話は家長に任せて、その他の点については、家族の中で、一番喜ぶ人に売り込むことです。保険や住宅ローンなど妻や子供たちに知識や興味がない事柄は一家の主に任せることです。

このテクニックを一言で言うと、商品やサービスの内容によって家庭内を分割して売り込むということです。しかし、同時に家族としての一体感を尊重することもクロージングを容易にします。

基本ルールは、以上挙げた4つのプロスペクトタイプすべてに当てはまります。彼らの信頼を勝ち取ること、彼らを正しく分類して、彼らと同化することです。これらをきちんとすればクロージングは容易になります。

彼らの置かれた環境(事情)を分析し、4つのタイプに振り分ける。その上で、各グループのどれに位置付けるかを決める。個性に合わせて、あなたに対する信頼を確立する。最後にプロスペクト、あるいはプロスペクトにアドバイスを与える人物と同化する。

そうすれば自然とトップクラスの成約率でのクロージングが可能となり、あなたは、「ここに、ご署名と捺印をお願いします。」と言い続けるのです。