クロージングパートナーと分割統治

<だれと組むのか>

良い方法ということは分かりましたが、次に考えなければならないことは、誰とダブルチームを組むかです。誰がダブルチームの相方としてベストで、何をもってベストとするかです。パートナーの役割とアイデンティティー(本質、独自性、個性)は、たいへん重要です。ダブルチームで成果を上げようとしているのなら、慎重になって当然です。

タッグチームとほぼ共通する一般的な約束事が、ダブルチームにも、いくつかあります。

決して嫌いな人、合わない人とチームを組んではなりません。おおざっぱな目安ですが、いっしょにランチやお茶をすることができる人を相手に選ぶべきです。

決して頼りないと感じている人を選んではなりません。どんなに仲が良くても、です。

必ずパートナーには、状況や経緯について事前に教えなさい。彼が効果的なチームワークができるように、あるいは、客の前でトンチンカンなことを言い始めないように、あなたがプロスペクトについて知っているすべてを彼に教えなさい。

必ずプロスペクトにマッチしたパートナーを見つけなさい。野生動物の保護に熱心なプロスペクトや動物虐待防止協会の役員のところに猟師を連れて行ってはなりません。

4つの基本ルールを沿ってパートナーを選ぼうとすると、タッグチームの時と同様、候補者がいろいろ出てくるかもしれません。しかし、必要であれば一人のパートナーに固定してもかまいません。ただし、あなたが彼と協調でき、プロスペクトとの接触前に完全に詳細を伝えられる場合に限ります

経験上、ダブルチームのパートナーはプロスペクトやその時々の状況に応じて、一番合った人に変えながら選ぶほうが良いことが分かっています。

<営業マン>

多くの場合、ダブルチームは営業マン同士で組むのがベストです。進んでクロージングの協力に時間を割いてくれるだけでなく、彼自身もクロージングを日々行っているからです。

営業部長やセールスマネージャーは他の責務がありますので、必要なタイミングで応援してくれるとは限りません。それと彼らは、営業マンたちのように売り込みとクロージングを日々行っているわけではないので、腕が鈍っている可能性があるのです。その点、現役のプロの営業マンは心配ありません。

もう一人の営業マンと組むときには、強調すべきところを強調してください。彼が如何に偉いのかについて、くどくど述べてはなりません。彼に権威や大きな権限はないからです。彼が自分より、どれほど売り込みが得意かということも、繰り返し言うようなことではありません。プロスペクトは営業成績の良い人に、容赦なく売り込まれるような目に遭いたくないのです。

ジョー(パートナー)が以前、同じような営業上の問題を簡単に短期間で解決したことがあることを強調しなさい

ジョーが、この業界での経験が豊富で、他の営業マンや組織の幹部たちより情報をより多く持っていることを強調しなさい。彼の強みについて、的を絞った言い方をせずに、プロスペクトに、より良い買い物をしてもらうための幅を持たせた言い方をしなさい。

<ダブルチームは二又のフォークである>

アメリカンフットボールの試合で、クォーターバックを倒そうと、敵のタックルがバックフィールドに突撃してくると、コーチはラインのエンドにいるタックルとガードの二人に対抗するよう指示を出します。それと同じように二人の営業マンもダブルチームを組み、プロスペクトが折れてくるまで2方向から働きかけます。

2人攻撃を使ったクロージングの最良のやり方は、チームワークに徹するということです。1人の営業マンは、客であるプロスペクトが持っていた面倒な話題のところまで引き戻し、パートナーに状況と問題に対する感触を持ってもらうことからスタートするかもしれません。

クロージングパートナーは、絶対に組んだ相手の話を遮ってはなりません。逆も然りですが、パートナーが話している間、自分に進んで話を振ってくる気配はないかに注意を向けているべきなのです。話の合間が長くなった瞬間をとらえるのです。

この方法を取れば、プロスペクトが防御の体制を立て直すことが困難になります。別方向から交互によどみなく弾幕砲火を浴びせられて、聞くことだけで精一杯になるからです。

<分割統治>

ある二人の営業マンことを今でも覚えています。彼らは高額不動産の営業をやっていました。別々に営業することはほとんど無く、いつも、住宅販売を共同でやっていました。彼らのリスク回避型のクロージングテクニックはシンプルであると同時に信頼性もありました。

彼らのダブルチーム戦術は大昔からある「分割統治」という軍の考え方でした。

家に到着すると彼らはカップルのお客にベッドルーム、バスルームなどの主要なところをいっしょに見てもらいます。二人がお互いに興味を持つところだからです。

夫と妻のそれぞれ別個の興味を聞き出すことができれば、彼らはこの家を選ぶことになるでしょう。なぜならば、この家はそれぞれに対して別々に訴えかける魅力を持っているからです。

ここぞという時に、突然一人が、書斎があることを思い出します。偶然にではありません。夫は大学の教授か作家だったので、大量の蔵書ができる場所や一人で他人に邪魔されない空間を好みました。

1人が夫に書斎を見せている間に、チームの別の一人は念入りにプランされたランドリールームを見せていました。そこには、彼女がリラックスしながら洗濯や乾燥ができるように、リクライニングシートとテレビ台用のスペースがありました。

それは素人のシェフが腕をふるえるアウトドアのバーベキュー台かもしれないし、アウトドアスポーツ愛好家のためのプールやテニスコートかもしれません。いずれにしても、この二人の営業マンは「分割統治」が住宅のセールスにも応用できることを発見したのです。

この夫妻が、自分たち自身の快適さや楽しみのために用意されたものを見終わったら、値段や支払条件についての次の話が、ずっとしやすくなります。

上記はダブルチームによる努力が報われる完璧な事例です。特にチームの2人がスムーズな流れで売り込めるように、事前に協力し、反復練習した場合、いっそうの効果があるということです。

<上司とのダブルチーム>

数年前、私は独立してセールスの仕事をしていました。その当時、私たち夫婦に圧倒的な効果のダブルチームクロージングを成功させた、すばらしい事例がありました。

実を言うと、それは私のアイデアだったので、自分にというより家内に対して行われました。

私は生命保険の良いプロスペクトになる適齢に達していました。まだ若く高収入で、妻と全員が10歳未満の4人の子供がいました。

ある日ジムが電話で、その日の午後に私に会いたいと言ってきました。月を追うごとに保険の必要性が頭の中を断続的にかけ巡っていたので、すぐに承諾しました。

彼は私のオフィスにやって来て、完全な保険プランを見せてくれました。子供たちの大学の学費、私に万が一のことがあった時の家族の収入、いつか私が引退した後の月々の受取金など、それからの20数年間に必要となるすべてが含まれていました。

ジムには自分に売込む必要はないことと、妻ベティーがそのプランに反対するはずであることを伝えました。彼女は公務員として、良い仕事を持っていました。彼女も私も子供たちも健康には全く問題がなかったので、追加の保険に入ることで高額な保険料を払うことに賛成するはずがありません。私にはそれが分かっていました。保険契約を増やす話をするたびに反対されていたからです。彼女が何等かの理由で仕事を辞めたときの収入保証にまで高い保険料を払うことはないというのが彼女の言い分でした。

ジムの提案は、その夜に、彼と代理店の上司が二人で家にやって来るというものでした。彼曰く、その人は女性に対する営業にかけてはピカイチの説得力抜群の営業マンとのことでした。

我々3人は2時間もかけて彼女に説明しましたが、彼女は一切信念を曲げませんでした。私がいつか引退すること、それが若い世代への責任なのだということや、彼女に署名するためのペンに手を伸ばさせるための、ありとあらゆる論理的な理由を話して聞かせました。それでも彼女はテコでも動きませんでした。彼女は永久に自分の仕事ができなくなったり、私が死んだりする可能性を、全く見ようとしませんでした。

彼女がコーヒーを入れるために席を外してキッチンに行って行った後、少し間をおいてからジムのボスは私に、向こうに行って二人だけで話したいと、身振りで示しましので、行ってもらいました。

10分たってから、コーヒーが載ったトレーを持った彼と、それに続いてクッキーとクラッカーの皿を持った妻は出てきて、「レス、たとえ私が仕事を辞めなければならなくなっても、この重荷を背負っていく覚悟はあるの?」と彼女は聞きました。

私はそうすることが自分の望みなのだということを彼女に念を押しました。

3人が2時間もかけて出来なかったことを、そんな短時間でどうやって出来たのだろとジムと私が驚いて顔を見合わせるまで、妻とその代理店の上司が話し合っていた時間はたったの10分間でした。

次の日、身体検査の手配の電話をかけてきたときに、彼は言いました。

「私が思うに、3人がかりで同時に彼女を責め立てたことが彼女にとって不愉快だったのだろう。自分の本当の居場所と言えるキッチンの中で初めて、じっくり考えることが出来ったってことかな。」

「キッチンは彼女の避難所(聖域)であり、彼女のオフィスだ。料理をし、皿を洗うキッチンという場所でこそ、じっくり考えてもらうことができると思って、そこが話すべき場所だと判断した。」

「コーヒーカップを取り出すのを手伝い、コーヒーの準備をしながら、私は自分の友人の話をしたんだ。君と年齢も暮らし向きも同じような人で、先月、事故死した。彼の妻は腰痛のせいで仕事を続けられなくなっていたので、2歳になる子供を育てるのは事実上無理だったんだ。」

「その未亡人の夫が亡くなった数日後に、彼女のところ訪ね行くと、これから子供を抱えてどうやっていけばいいのか途方に暮れていたことも話した。」

「この時、約15万ドル(訳注 現在の価値で1億5000万円)の小切手をコーヒテーブルの上に置いたんだが、心が躍ったよ。何も心配することはなかったんだよ。彼女とお子さんは、保険金の元金には手を付けずに配当や金利だけで裕福に暮らしていけるということ以外に何もなかったんだよ。」

これを聞いてあなたは、ダブルチームでなくても、単独で売ることができたはずだと思うかもしれませんが、それは違います。

彼が妻と二人だけで話している間、ジムが、私がキッチンに入って行かないように、そとで相手をしていてくれたからに他なりません。もし、もう一人の男がいなければ私はキッチンに入って行って、またもや妻に不要なプレッシャーを与えていたに違いありません。彼が言うように、妻が慣れている環境の中でじっくり考える機会があって、クロージングできたのです。

<マイクから一言>

このストーリーは、前述の分割統治と本質的には、同じです。ファミリーへ何かを売る場合、別々に聞いてもらったほうが、すんなりそれぞれの心に入り込んで行って、それぞれの興味を沸かせることができるということです。家族の一人には、営業マンからの説得で、自分がそれを欲しがり始めている姿を、他のファミリメンバーに見られたくないという心理が働くことがあります。その時、ちょっと離れたところで、個別に説明されたほうが、営業トークの聞き心地よいのです。

 

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