営業マンには夜も昼もない

私の友人で、非常に優秀な保険の営業マンで10年の経験があり、本部のトレーニングの講師もやっている人がいました。彼は、3年連続で、百万ドル達成表彰を受け、自分のトレーニングを受けた連中が、一貫して好成績をあげていました。

そこで、彼にレンガの鎧について聞いてみました。

「売り込みへの抵抗、つまり、君が言うところのレンガの鎧は、われわれ営業マンが必要とされる理由そのものだよ。もしそれがなければ、営業マンはいらないということになる。」

「もし、客の保険に対するニーズと購買力が把握できれば、すぐにクローズジングに取りかかることができるとういことを、私は新人に対して入社日の最初に伝えることにしている。」

「次に重要なことは、客に訪問させるのではなく、自分から訪問するということも教える。訪問先は、客の事務所でも、職場でも、談話室でもない。私の好きなセールストークには、あるタイトルが付いている。『夜のシフトで働こう』、私の教え子に教えるのは、まさにこのことだよ。」

「保険会社の仕事に就いて、最初に学んだことは、自分は、医者や弁護士と同じプロフェッショナルであるということだった。つまり、仕事上、客の一番プライベートな生活の部分に深く立ち入っていく特権があるということに気がついたのさ。」

「客の事務所での面談では、その人の頭の中は、仕事のことでいっぱいで、彼の秘書や電話が、しょっちゅう話を遮るので 割に合わないことが分かったんだ。」

「彼がいつも忙しく、こちらの事務所に来る時間もなく、来たとしても、そわそわするだけで、売り込みを受けても上の空だからだと分かったんだ。」

「それでは、何が答えなのか? 夜に働くということだ。私は、昼の12時か1時に家を出て、夕食後が一番忙しかったよ。」

「早めの午後に出勤すれば、事務処理をしたり、郵便物に目を通したり、夜の面談予約をする時間は十分にあったからね。」

「アポ取りの電話は、だいたいこんなもんだった。」

「スミスさん。サウスウェスタン保険のジム・ベグリーです。御無沙汰しております。最近、魚釣りの調子はいかがですか? 」(ここで、客と懇意であればあるほど有利だが、彼の時間を取りすぎないほうが良い)

「もし、今晩、ご自宅におられるようでしたら、少しの間、訪問させていただきたいのです。お見せしたいものがあります。8時はいかがでしょう? それとも、もう少し早めがよろしいですか? 私は6時半から空いています。」(時間の選択肢を与えることで、断りづらくする。)

「いいよ。では、7時に会おう。」

「彼の時間を何時間も取るような電話じゃない。ただ、今でも懇意であることを確かめる言葉だけで、本当の目的は知らせない。電話だけでクロージングは無理だ。電話では、売り込みはしない。」

どうして、夜働くのか。しかも、見込み客の自宅で。 よく考えてみると、それなりの理由があることがわかります。

「前に言ったように、客の私生活に、彼の個人的な関心事に踏み込んでいくべきなんだ。彼にとって、最もリラックスできて快適な場所は、自宅なのさ。」

「もう一つの理由は、彼の奥方がそこにいるということ。私が売ろうとしている保険商品から一番恩恵を受けるのは奥方と子供たち以外に誰がいる?」

「彼の保険が満期になるときも、彼の家の庭の外を見て、プールで遊んでいる子供、そのそばにいる奥方が眺めながら、次の契約に結びつけたことが何度もあったよ。」

「とにかく、家族、つまり、奥様がそこにいて欲しいんだよ。分からないことに、すべて、ちゃんと答えられるようにね。奥方を考慮に入れなかったり、奥方から聞かれた質問に夫が答えられなかったことで、どれほどの注文を逸したことか。口論が持ち上がり、夫が『わかったよ!君が僕の判断を信用しないんだったら、保険契約は止めだ。』なんて議論が起きて、売り込みは台無しさ。とにかく、サインを貰うまでは、彼の判断のなど私自身も信用しない。」

「もちろん、この方法(夜勤クローズ)が使えない分野も沢山あると思う。でも、そこは耐久消費材や家具、その他いろいろのものを売るときでさえ、見込み客の自宅が一番クローズしやすい場所なのさ。」

「車、家、家具、保険商品、投資商品、貯蓄商品、お墓、あるいは、雑誌の講読まで、奥方が関心をしめすものは、すべてこの方法が通用すると信じている。命を賭けても良いよ。」

鎧の中にある鍵レンガは、見込み客が自宅という安全な場所にいて、くつろいで、打ち解けているときの方が、ずっと早く簡単に取り除くことができるのです。

「それともう一つ。」彼が、笑いながら言うには、「奥さんに相談しなければならないなんてことを、客は口にできないだろ?」

笑おうが笑うまいが、彼の最後の言葉は、うまく真実を語っています。客には、言いたくないことを言わせずに、家まで出向いて、売ろうとしているものについて説明することで、クロージングへのアプローチの中に、客の妻という非常に強力な味方をつけることができるのです。

<マイクから一言>

このセクションを読んで、どう思いましたか? アメリカの営業マンも、なかなか、泥臭いなと思われた方、それくらいのこと当たり前だと思われた方、自宅訪問を受け入れてもらうくらいの人間関係ができるまでが大変で、簡単にこんなことができれば苦労しないと思われた方、千差万別だと思います。トップセールスマンは、時には、客が驚くほど、私生活の領域に入ってきたり、こんなことまでやってくれるのかと思わせるような泥臭いことを恩に着せずにやることがあります。 こういうやり方が、最も効果を表すのは、その営業マンが、すでにプロスペクトから、その道のプロであること、人間的にも信頼され、頼られていること、実は、根底にはプロ意識とプライドを持った人間であることなどが、認知されている場合です。事前に正しいコミュニケーションと知識、経験を駆使して、客にある程度の信頼を得てから、一線を超えた、マニュアルにない、客がここまでやってくれるのかと感動するようなこと軽く驚くようなことをやってあげましょう。絶大な効果があります。それは、印象のギャップからくる効果です。印象のギャップを与えるための土台がない状況で、一線を超えた販売活動をやろうとしても、効果がないだけでなく、大失態を演じる危険もあるのです。

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