競合品との値段の比較ばかりするプロスペクトにどう対応するか
ショッパー(比較のために、他の競合品を見て回る人)ほど、自分の手を煩わせる人はいません。こういう人たちは、一番良いものを買ってもらおうと努力しているあなたの言葉をそのまま受け取ってはならないのだと固く信じています。
私はこのような頑固物にも対処できる方法をいくつか見つけました。「もう少し他を見て回りたいのだ。」という反論にどう打ち勝つかついて、すべてのジャンルのセールスの人たちを対象に聞き取りを行い、彼らの答えを3つの方法に絞り込みました。
行っていらっしゃい作戦
私は、最初のショッパー・ストッパーを「行っていらっしゃい作戦」と呼んでいます。
このテクニックでは、その場でクローズすることはありませんが、この方法を取ると、客との関わりをもう一度持てることが多いのです。
ここで私が使うのは、疑いの心理学です。疑いの種を注意深く肥やしてから、彼が好きなだけ見てまわれるように解き放ち、いろいろな数字や情報を集めた結果、もとの場所に戻らないといけないという警告を感じるように仕組むのです。
この方法では、その見込み客(プロスペクト)が、この方法に合っているかどうかを、相当注意深く見極めねばなりません。あなたは「人間を見極める本当の目利き」、何に彼らが反応するかの目利きになるのです。この「行っていらっしゃい作戦」が使えるのは、あなたが何をしようが、何を言おうが、断固として、他を見て回るのだと決めている客に限ります。これは、彼が見ているものが、車であろうが、保険商品であろうが、工場で使われる10万ドルの化学品であろうが同じことです。
では、この方法がどのように機能するのかを見ていきましょう。
まず、彼が戻ってくるように保険をかけておきましょう。彼に納入しようとしている化学品の決定的な値段を知らせてはなりません。
ただ単に、客が求めている仕様の化学品を最安値で提供できること、この仕様をその値段で出せるところは、他にどこにも無いとだけ伝えてください。
次に、最良なものを最安値で買うという彼の信念に敬意を表してください。(1-3、1-5の<マイクから一言>を参照のこと)あなたは、訓練を受けたプロの営業マンなのですから、いつも正確に同じことをしてください。
「ジョーンズ様、それは良いですね。私のやり方も全く同じですよ。お客様自身のお金を賢く使われようとされています。信じていただきたいのですが、お客様が間違った買い物をして損をされると私も困るのです、いろいろ、他でも探してみてください。」
「それでも、我々より良い条件は、他社には出せません。もし、他を見て回られて、納得されましたら、どうぞ、弊社に決めてください。最後に、私のところに他社さんからの数字や条件をお持ちください。結局、私どもとの取引がベストだと証明してみせます。」
これで、彼は戻って来なければならなくなります。あなたは、一般的な話しかしていません。具体的な数字や条件は何も言ってないのです。何も約束することなく、最後の段階で彼と関わることが出来るのです。
「それは、フェアじゃないだろ。今、君の数字を教えたまえ。その数字が他より安ければ、戻ってくるよ。もし、そうでなければ、自分が見つけた一番安いところから買うよ。」
「申訳ありません。それはできません。10万ドルの化学品の売買契約ですので、検討しなければならないことが多くあります。ジョーンズ様に正しい判断をしていただきたいのです。 私も営業マンとして、ちゃんとした仕事をしなければなりません。正確に検討させていただくためには、ジョーンス様の協力が必要なのです。他社の見積りをすべていただいた後、弊社との契約条件といっしょに詰めさせてください。」
一部の客は、この時点で去っていきますが、そんな人たちとの成約は、もともと無理なのです。彼らは、とにかく一番安い値段で買うと心に決めており、それ以外何も考えていません。
ほとんどの客は、「お客様がお戻りになったときに、私との取引が最良であることを証明します。他社はその条件には勝てません。」という言葉に負けてしまうのです。
もし、彼があなたのより低い、本物の見積価格を他のサプライヤーから取っていたとしたらどうでしょう。
思い出してください。あなたは一番安い値段とは言わずに、最良の取引と言ったのです。つまり、最上級の化学品に対する最も安価な値段という意味で伝えたのです。
彼がもう一度コンタクトしてくるときには、それが、自分の会社への訪問であれ、こちらからの訪問であれ、二つのことが起きています。彼は競合相手からあまりにも多くの仕様や値段、詳細な取引条件を聞いていて、混乱し、疲れはてています。彼はそれに終止符を打ちたいと感じています。言い換えると、競合相手が、あなたがクロージングできるようにお膳立してくれたのです。
もう一点は、競合相手のいないところで、弁解の余地を与えずに、相手の条件を打ちのめすことができます。あなたは、相手の納期を攻撃することができます。こちらの化学品は、関連省庁の検査で競合品より3%が強いことが証明されており、現在、倉庫に十分な在庫があるので、製造手配の必要もなく、即納できるなどと言えるのです。
たとえ、こちらの値段が少し高くても、売ることができます。反対意見、つまり反論が、よく見えているので、有利に戦うことができます。
有能な営業マンは、この手の反論6つのうち5つをねじ伏せます。
本日限りクロージング
次のショッパー・ストッパーは、「本日限りクロージング」というものです。
あなたは、オレンジジュース6缶とかローストビーフ3ポンドが、本日限りいくらだというような新聞広告を毎日のように見かけるでしょ。これらの広告が言っていることは、もし今日買わないのなら、明日や次の土曜日には、この売値をそのままする約束はできません。この「約束」が鍵なのですが。 なぜでしょう。
想像力を働かせてください。今日は、営業成績コンテストの最後の日で、あなたは100万ドル達成者に近く、会社は月末や年度末には、いつも例外なく最低価格を出していたとします。
「ジョーンズさん、このボールペンが一番良いPR用の小道具だと分かったので、欲しいと言っておられましたね。」
「それはそうだが。アクメ商店の話も聞いてみたいんだ。うちの会社で検討してみたいことがあると言うんだよ。悪く思わないでくれ。」
「もちろん、悪くなど思わないですよ。わかりました。アクメ商店と話そうと決められたわけですね。それなら、今すぐにでも、当方に注文を決めていただくのが宜しいかと思います。確かな理由がありますので、どうか聞いてください。」
「私事ですが、今月のトップの営業成績の表彰をいただけそうなのですが、あと一息なんです。ここで、理解いただきたいのですが、私は、お客様の助けで報奨金を取ろうとしているのではありません。今から、上司に電話をして、ボールペンが購入できる今日限りの値段を取ろうとしているんです。」
「ジョーンズさん、お分かりいただけると思いますが、この値段は、通常では出せない、今日限りの価格です。」
彼が求める商品が少し大きめだったり、変わった色、あるいは、特別価格の品目なので、それが、最後の一つである場合や、他の二人の営業マンが連れてきた客が、今にも買いそうだというとかいうような場合と同じです。
「ここで、お帰りになって、また後から、戻って来られた時には、無くなっていたなんてことにならないようにお願いします。奥様は、絶対にがっかりされますよ。」
「選ぶとしたらこの色しかないとおっしゃってましたよね。」
売り込もうとしている製品やサービスに応じて、非常に多くのショッパー・ストッパーを展開することができます。
単純クロージング
最後のショッパー・ストッパーは、単純な売り込みのアプローチと呼びます。
単純な売り込みとは、その言葉通りです。種も仕掛けもなく、まっすぐで、シンプルです。ただ、「今、お決めください。」というのです。それが、車であれ保険契約であれ、何かのプランであっても、同じことです。
「ジョーンズさん、奥様も他のディーラと会ってから、どれを買うのかをお決めになりたいわけですね。これが一番というものをお探しになっていることも、よく分かりますし、他社の悪口を言うつもりは、毛頭ございません。でも、ちょっと考えてみてください。」
「奥様も、この色とデザインがお好きで、お気に召されています。ジョーンズさん。お決めください。」あなたは自分の時計を見ながら、こう言います。「手配させてください。夕食の時間までに帰っていただき、好きなテレビ番組でも見ていてください。あれこれ迷うこともありません。」
シンプルで、直接的です。やりすぎではありません。奥方の応援があるということを少しアピールしているだけです。力強く、ガツンと決めにかかりましょう。その場で簡単に決まってしまうところを見てください。
このショッパー・ストッパーの素晴らしいところは、これが、うまく行かない場合、前の二つが、まだ使えることです。でも、その必要がないことが多いのです。
<マイクから一言>
「いっていらっしゃい作戦」は、客が戻ってこない可能性もあり、失礼になる場合もあるので、大きな契約を決めにかかっている場合、勇気がいることだと思います。ここで大事なのは、この作戦が使えるプロスペクトであることを見抜く能力と、逃げられてもめげる必要のない豊富なプロスペクトリストがあることです。見抜くためのヒントですが、あなたはプロスペクトの会話の中、その人の持っている雰囲気や人間性、他の営業マンからの情報などから自分で判断しなければなりせん。その人の会話が他社との値段の比較の話ばかりで中身が無いとか、その人と共通の価値観を見つけ出し、人間同士の親近感を高める努力をしているにも関わらず、とてつもなく分厚い壁に阻まれていて、びくともせず、跳ね返されている感じがするなどです。このタイプの人たちは、あなたと自分との間に親近感が生まれることを恐れるのです。その親近感のせいで、一番安いものを買うという自分の信念が壊されてしまうかもしれないからです。
「本日限りクロージング」のキーワードは、プロスペクトに不安を与えるということです。これは、あなたが想像する以上に大きな効果がある方法で、現代のネットでの広告でも「期限は、いついつまで、この条件で買えることは、二度とありません。」などという文句が、満ち溢れています。この方法を営業マンが会話の中で使う場合、不安を与えようとしているのが、あまりにも見え見えで不自然な場合は、プロスペクトの嫌悪感を引き起こしますので、細心の注意を払ってください。実は、「この価格は今月限りです」と広告しておきながら、次の月も同じ値段で売ることは公正取引法で禁止されています。この手法が詐欺的と司法関係者に認識されるほど、劇的な効果があるからです。


