ローンの斡旋が強力な武器となるかどうかは、営業マン次第

地元のローン会社のローン担当者と昼食をとっていたときに何気なく聞いたことで、焦げ付き(返済の滞り)やそれに伴う取引の失敗をさけるための定式を教えてもらうことができました。

「ジェンクス、君らは、お金を貸すことが仕事だから、できるだけ多くの客にローンしたいわけだろ。君には、誰かがローンを申し込んできたときに使える定式かプランがあるのかい?それとも、経験に頼りながら、のるかそるかのアプローチをして、後は、焦げ付かないことをひたすら願っているのかい?」

「何年か前に、60年もの間、金融の世界に身を置いて、社長まで経験した、ある人が引退したんだが、ずっと以前に彼から、今でも通用するような、当時も使っていた定式を教えてもらった。」

「例えば、その顧客はいわゆる「優良」だとする。それが意味するところは、一度か二度、返済遅れの電話はあったものの、少なくとも返済を完了した契約が2件あり、彼の銀行口座に問題はない。」

「彼の月収は手取り600ドルで、3000ドルの船の装具を買いたがっている。 月々の支払いはかなり抑えて85ドルが希望だった。 実際のところ、それ以上は無理だとも言っていた。」

「定式とは、こういうことだ。彼の住まいだが、それが、借家であろうが、ローンで買ったものであろうが、借金なしの持家であろうが、かかるお金は月収の一週間分、つまり、150ドルを割り当てる。

「バスやタクシーなどの交通費や車にかかる費用で、もう一週間分で、それ以上はかからない。」

「食料品でも、一週間分で、それよりは、かからない。」

「これで、彼の手取りの4分の3だ。しかし、それ以外に雑費や予想外の出費を考慮に入れなきゃならない。腕の骨を折るだとか、車のタイヤ交換、洗濯機の買い替え、保険、衣類など、予想外のいろんな事が持ち上がるだろ。」

「これらが、最後の4分の1を食ってしまう。さて、ここで、この定式の鍵を教えよう。1カ月4週間を4で割らずに、客を悩まさないように細心の注意を払いながら、もう一歩細かく踏み込むのさ。そして、5で割るのさ。」

ここまで来て私は、彼が経済学と金融についての貴重な教えを授けてくれているのだと確信したので、紙ナプキンに忙しくメモを取り始めていました。

「5で割ることで、彼が安全にいける余裕ができる。さて、彼の月賦払い、請求書、その他の債務をもっと細かく正確な金額でリストアップしよう。言いかえると、18ドルを20ドルとか15ドルに丸めずに、リストにはそのまま、18ドルとする。」

「具体的には、こうなる。船を欲しがっている我らの客は、家のローンに月々105.54ドル支払っている。保険込みで、家が全損した場合を完全にカバーしている。これが、106ドル。」

「去年買った新しい車のローンの支払いは、月に89.26ドル、つまり、89ドル。小さな子供が一人いるだけなので、食費では、少し一息できる。それが、週に35ドル。つまり、月に140ドル。 いろいろな予備費、とりあえず、150ドルでみる。具体的に何か明確にできないからだ。安全幅をいつも念頭に。」

「他にも月賦払いが67.78ドルあったので、これが、68ドルで、月のトータルの支払い請求の合計は553ドルとなり、47ドルがうく。起き得るすべてのことを勘案し、安全余地も組み入れてある。(彼の月収は、実は月収は、600ドルではなく、625ドルだったので、実際は72ドル浮く。)

「さて、5で割った基準にもどろう。これで125ドルを家に使える。実際は、19ドル分低い。車は、36ドル分低い。しかも、その返済は、船の装具の支払いが終わる1年前に完了する。食費については、150ドルよりは10ドル低い。予備費は見直して、125ドルと見る。 (これで、97ドル浮く。)

「彼が安全に買えるかをもう少し突っ込んで見てみると、使うことのできる余剰金は、47ドル。(実際は、97ドル)車のローンについては、3分の1返済が終わっており、完済まであと7年かかる。しかし、それ以外のローンについては、2-3年以内に月71ドル分の他の支払いが終わる。」

「この客にとって、月々90ドルの支払いは、容易いものだ。100ドルでも危険ではない。いずれにしても必要な頭金500ドルを払えば、彼は船の装具を手に入れ、楽しむことができるということだ。ローンの返済の半ばで、返済を猶予してもらえる実力もある。もし、必要が生じて、そうしたければの話だが。彼は、そんなことが出来ることも知らなかったんだよ。」

私は、「買いたいのだが、支払う余裕がない。」と心から信じている見込み客からの反論を乗り越えるために、この定式を何十回と使いました。

この定式を正直に正確に適用して、財政的な反論を退けてください。しかし、一つ警告があります。この定式を使った結果、客にそれを買う余裕がないと出たら、そのことを彼に伝えましょう。余裕ができた時点で、彼は、また、あなたのところにやってくるでしょう。これも何度も経験したことです。あなたも経験するでしょう。なぜか? それは、信頼関係ができたからです。

<マイクから一言>

月収を4で割ったり、5で割ったりして、家、車、食費などに分配するのは、その客の堅実さの指標として用いることができます。現在の日本の平均収入や物価にあてはめるために、数字を1000倍して、円をつけてみるとわかりやすいかもしれません。日本人が常識と考える貯蓄率は、アメリカ人より高いことも勘案すべきです。月収が手取りで38万円のサラリーマンがプロスペクトであった場合、あるいは、月収が112万円ほどの経営者だった場合、入ってくるお金がどんな内訳と割合になっているか、なるべきかを自分なりに、考えてみてください。基準は、自分で作ってみるべきですが、上の二人の収入を5で割ると、それぞれ7万6千円と22万4千円となりますので、家賃として考えると、まんざらかけ離れているわけではありません。車のローンの基準も5分の1を割り当てていますが、米国が車無しでは、生活できないくらいの車社会であることを勘案すると日本人の収入に対する車への割り当ては、10分の1でいいかもしれません。食費ですが、アメリカ人のエンゲル係数は、約20%で、日本人のそれは約25%なので、日本の場合、4分の1を割り当てたほうが堅実かもしれません。聞き出さなくても自分で設定できる部分もあります。日本の営業マンが見込み客から、家や車、その他生活全般の財政事情の数字を聞き出すには、相当のコミュニケーション・スキルと信頼関係、細心の注意が必要となります。心の底から「このお客さんに、欲しいものを手に入れていただくために、最善を尽くしたい。お役にたちたい。」という気持ちが自分の中にあることを確認してくださいその気持ちがさりげなく伝わる会話をしてください。当たり前ですが、次のような直接的な表現は、タブーです。「ローンで買えますよ。すぐに紹介できます。」「一か月に出ていくお金、入ってくるお金を教えていただければ、あなたくらいの収入の方が、ローンで安全に買えるかどうか検討させていただきますよ。」これは、とんでもない言いぐさです。

プライドの高そうなプロスペクトには、「ほとんどのお客様がローンで購入されていますし、かなり裕福な方でも頭金は、(少な目の金額)くらいしか入金されません。」とか、「この種の買い物は、皆さまローンをご利用されております。」とかの無難な言い方をスターターに使ってください。みんな、お金がなくてローンするのではなくて、それが、普通だから、あるいは、あまりにもお勧めのローン契約だから、みんなそうするのだという理屈を伝えてください。1-41-5のマイクの一言をもう一度読んでくださいまずは、一人の人間として親近感と信頼感を感じてもらえるようにコミュニケーションを重ねることです。プライドの高いお客様にとって何がリアルですか?尊敬されたい、体裁を保ちたい、幻滅されたくないなどいろいろです。客のリアリティ-(実感とか現実感)を感じとりながら、傾聴のスキル、を駆使してください。1-5で説明した「コミュニケーション・サイクルの量」と「親近感の増大」と「リアリティーの共有」は、三位一体であることを念頭において、傾聴を続けてください。なぜ、三位一体なのかですが、3つのうち、どれか一つが欠けると他の二つも成り立たないからです。日常生活でも、正しいコミュニケーション・サイクルを回せるように、意識しながら努力することを続けてください。コミュニケーションは営業マンの最大の武器です。コミュニケーション・スキルがあれば、ほとんどのことは、解決できます。