クロージングにストップをかけるプロスペクトの心のしこりを取り除く

第1章では売り込みへの抵抗というレンガ造りの鎧と、鍵となるレンガをどのように見つけてそれを取り除き、プロスペクトをクロージングに導くのかについてお話ししました。

それらのレンガを見つけて取り除くということは、たいへん大事なことですが、どう考えても、それが成功を呼ぶクロージングテクニックのすべてではありません。実のところ、それは終わるプロセスの始まりなのです。クロージングの始まりです。もう一つ非常に重要な(おそらく、より重要な)段階があります。そこを注意深く対処しなければなりません。さもなければ、それまでの努力が水の泡となってしまうかもしれません。

第1章ではプロスペクトが好みの車や電動芝刈り機、あるいは投資信託商品を買いに自宅を出るときに、レンガの鎧を身にまとい始めることを言いました。状況が逆で、あなたが彼の職場に訪問する約束をしているときは、彼はあなたの到着の数分前に鎧をつけ始めるのです。

営業マンとプロスペクトを正しい視点で見るために、二人の古代ローマの剣闘士を思い描いてください。どちらも甲冑と剣を持っています。セールスアプローチという戦いが始まります。

その戦いは二転三転します。見込み客は剣を構え、営業マンに切りかかります。(反論)営業マンはサイドステップして避け(反論をさばき)、剣を突き立てます。(反論に対して、買ってもらう理由を投げ返す)

その営業マンが糸口をつかむまで、その戦いは(売り込み)は続きます。電光石火のごとく、相手の甲冑の留め金はずしてしまい、それは、地面に落ちてしまいます(反論は消え、レンガが取り除かれる)。相手が、甲冑を失い、無防備に立ち尽くしているところに、あなたは、慎重に狙いを定めて突き刺します。(クロージング)

これがローマ時代なら剣闘士は、ここで足を前に踏み出し、容赦なく相手の胸元に剣を突き刺していたことでしょうが、ここで見込み客(プロスペクト)と営業マンをローマの剣闘士に例えるのは終わりです。

突き刺したそのとき、死ぬのは営業マンであることもあるのです。(失注であり、クロージングの失敗です)

プロスペクトが甲冑を失ったのは事実です。レンガで出来た彼の鎧は、足元に崩れ落ちました。彼は反撃するための武器を失って、無力に立ちつくしています。でも、そうでしょうか?

ここで少し、客の身になってみましょう。この人は、無意識に売り込みへの抵抗というレンガの鎧の中に自分を包んでいました。そうすることで、自分は営業マンの攻撃から身を守れると思っていたのです。

それが突然、身ぐるみを剥がされ、すきだらけで、無力になっている自分に気が付きます。

が、ほんとう無力でしょうか? すきだらけですが、無力ではないのです。

彼は、まだ、「ノー」と言うことができるのです。ここがクロージングのプロセスの中で、最も決定的な数秒間、あるいは数分間なのです。ここからクロージングまでの間、細心の注意を払わなければ、彼が「買わない」と言うことは有り得るのです。

彼は、完全に打ち負かされました。反論はことごとく退けられ、敗北感を感じています。敗北を楽しめる人などいません。どうすれば、負け戦にならないかをあれこれ考えるでしょう。

そして、あなたが成し遂げたすべてを無かったことにする言葉があることに気が付くのです。それが、「ノー」という言葉です。レンガを取り除き、甲冑を剥がしても、まだ勝利ではありません。まだ完全ではないのです。「買わない」という致命的に言葉を客が口にする前に、そう言わせないための「決定ボタン」を見つけなければなりません。

 

<マイクから一言>

トップ営業マンは、しばしば人の心の中の1つのポイントを言葉や態度でタッチすることで、クロージングにストップをかけている不合理な考えをいとも簡単に取り除いてしまいます。この不合理な考えを起こしている心のしこり(トラウマ)を癒し、処理することをボタンを押すと表現します。それを処理することを本文では決定ボタンを押すと表現しています。レンガがすべて取り除かれ、買わないことの理由が全くないところまで来ているにもかかわらず、プロスペクトはしばしば、「買わない」、「こいつからは買いたくない」、「まだ買いたくない」、「とりあえずこの場は断りたい」などのクロージングを拒絶するような不合理な意思をもってしまいます。この章を勉強することで、あなたも決定ボタンを押せる(処理できる)ようになれます

ボタンには決定ボタン以外に別の三つのボタンがあり、その三つのボタンを正しい順序で押して行くことで、人間の心を何かに興味を持ちやすい状態にすることができるのですが、その事については、いずれお教えしたいと思います。

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