ある営業手法の実験 -プロスペクトタイプ別セールス-

お客様と同じ目線になって同化するとことのメリットについては、前述のウェブの事例だけでは語りつくせません。 私はセールスの部隊にいた7人の営業マンたちと協力して、完璧ともいえる実験を行い、行動の一貫性があれば、同化の効果が出ること見事に立証しました

我々は、店のオープンフロアで客を迎え、客と最初に相対した人が、その人を受け持つことにし、すぐに「交替」とか「上司につなぐ」ということしないようにしました。

6か月たったころ、私は、無視できないようなパターンがあることに気が付きました。誰かが若い1人客や若いカップル客についていて、逃げられそうな状況が発生した場合、ネイサンを応援につけると、だいたいクロージングにこぎつけました。

 

 

大人の女性や若い女の子とのやりとりで困っているセールスマンがいるときは、ウォルトの助けがあると、女性たちは納得してくれました。会社員と軍人の相手にもってこいだったのは、海軍の上等兵曹だったブルースでした。

そして、私の中で無意識のうちにやっていたことの意味がはっきりしました。誰かの応援がいるときは、プロスペクトと同調し、反論を最も理解し、処理してくれそうな人間を応援につけていたのです。

ネイサンは、週末にはスポーツカーでビーチに出かけるような、若くて活発な人間でした。

ウォルトは、お世辞が上手なイケメンでした。彼は妻も子もある、中身のある男でしたが、彼の手にかかれば、女性たちはあっという間に手なずけられてしまうほど、女性のあつかいが上手なやつでした。 

私が「ジョーンズ夫人、よくお似合いですよ。」と言っても、つねられたような顔をするような女性でも、ウォルトが「お召しになっているものは、どちらでお求めになられたのですか。御気にさわらなければ、私の家内にその店のことを教えてやりたいですよ。お客様はいつも、ほんとうにおしゃれですね。」と言った途端に、その人がとろけるような気持になり、売り込みに対する反論や疑いが消え去っていくのが見て取れました。

会社員や経営者の相手は私でした。この町での10年のビジネスの経験だけではなく、その間にできたトップレベルの経営者とのコネクションも豊富でしたから。

もう、このパターンがお分かりですね。我々は気づかないうちにこのパターンを気づいていました。軍人が来たからブルースとか、事業家が来たからレスだ、若い二人連れだから誰そらとか、あまり深く考えてやってわけではありませんでした。

そのパターンが分析できるくらい、よく見えるようになって来るやいなや「交替作戦」が生まれました。私は上司のところに行って、その要点を説明しました。

売り場は、そのままにする。一人のセールスマンが、どのタイプの客を相手にしているのかを判定したら、理由をつけてその場を外し、客のタイプにあった別のセールスマンを電話で呼んで対応させるという内容でした。スポーツ愛好家系、ほめ上手、イケメン系の代打ができる人間も現れました。

上司は、このアイデアに同意してくれましたが、全員が納得してやっているということと、売上という結果が伴うという条件付きでした。売れさえすれば、やり方は問わないということでした。

仲間で話し合った結果、まず3か月間、試験的にやってみるが、途中で仲間のうち2人の反対者が出た時点で、この作戦を中止するという条件を付けました。中止となった場合は、昔からのやり方にもどるつもりでした。

3か月後、我々は目標達成に対して、ものすごく厳格な、あの上司から最大限の称賛の言葉を聞くことになりました。

「みんな、よく頑張った。君たちの新しいプランは大成功だ。3か月前までの月の最高の2倍を記録した。おかげで明日から、売り場に足を延ばした時に、自分がここで働けて嬉しい、君らが客に対応してくれている姿を見るのが嬉しい、と思うに違いない。こんな言葉しか出てこないよ。」

我々はプロスペクトと同化していたのです。客と共通のバックグラウンドを持っているか、客と同調できるバックグラウンドを持つセールスマンをあてがうことで、同化のメリットは増幅されたのです。もちろん、あなたは交替せずに個人の努力でプロスペクトと同化することもできるのです。(その効果を知っているのですから。)

 

<ひとつのタイプに集中しない>

営業マンがやってはいけないことがあります。それは、ある一つのタイプのプロスペクトにだけ注力するということです。それは、まったくの罠(わな)です。彼は無意識に、あるいは意識的にクローズできるのはこのタイプだけだというところに行きついてしまうのです。彼のセールストークは、陳腐(ちんぷ)で、わざとらしく(ネタっぽく)なってしまい、そのアプローチは切れがわるく、無味乾燥になります。そして売上が落ち込むのです。

一方、自分の専門分野を作ってはならない理由はありませんこの場合、広い意味での「専門分野」です。専門分野での営業のという点で良い見本となる保険代理店は、たくさんあります。前述の「交替作戦」でやったようなに保険代理店も特定の引き合いやプロスペクトにバックグラウンドが合致している、あるいは慣れているという理由で一人の営業マンを担当につけるということをよくやります。

私の友人の一人は、保険営業の経験が豊富にあるにもかかわらず、彼の会社のビジネスを投資信託商品の分野へシフトしました。彼の会社は、保険の分野でのバックグラウンドが豊富なのに、どうしてその分野に打って出ることにしたのか聞いてみました。

「それは簡単なことさ。」と彼が言うには、「僕は農園のコミュニティーで生まれ育っただろ。そこには何十もの野菜農場を営む家があったので、自分の保険の営業も(自分が住み慣れた)そのエリアで始めるのが自然だった。実際、保険の営業マンのほとんどは同じことをしている。」

「このエリアでの保険契約は、ほぼ刈り尽くし、客の子供たちが大きくなり、結婚したりするまで、その子たちの分まで契約をもらった。投資商品の分野に参入することで知り合いも多く、信頼も得ている同じエリアで全く新しいマーケットを切り開いたんだ。」

「保険のビジネスを失ったわけじゃない。資格はまだ持っているので、クライアントから追加の依頼があれば対応できる。でも、投資商品を通じて、もっと多様な方法で資産を確保する方法も提案できるのではと考えた。特に保険については手つかずの大きなマーケットが枯渇してしまっているというという見方もあった。」

「その次の動きも考えている。これが最後になると思う。投信信託のプロスペクトがカバーできた段階で、保険の時と同じように若い世代が現れるだろう。その時、考えている分野に再度参入する。常に自分と同じ種類のプロスペクト(農家のコミュニティー)に溶け込みながら(同化しながら)だ。」

「不動産だよ。保険営業でやったように投資商品の営業からの利益を刈り取り、その調子で進み、売上の下降に備える。この場所、同じ会社で不動産に参入する。保険と投資信託の顧客にサービスを提供しながら、じっくり進んで行く。」

「ただ、聞いてほしいんだが、僕はこのエリア以外での商売をしないわけじゃない。紹介や郵便を使って新規顧客を開拓し、彼らにも農場コミュニティーの客たちと同じように、商品やサービスを提供する。客の選別ばかりしていたら、型にはまってしまい自分がかび臭くなってしまうからな。」

この男は、本流の収入は専門分野で成功することで稼ぎ、新たなビジネスについては、同じエリアだけでなく他のエリアも視野に入れることも忘れなかったのです。

私は、この営業マンが、かび臭くなることはないだろうと確信しました。それどころか、彼は(農場コミュニティーの同種の人たちに)同化し、溶け込んでいるというベストの条件で、営業できているので、決定ボタンをミスることは、まず無いだろうと確信しました。

要約すると、顧客の決定ボタンと、そのボタンをどのタイミングで押してクロージングするのかを示してくれる二つのステップからなるシンプルなプロセスに行きつきます。

 

ステップ-1

プロスペクトが気楽にくつろげるようにする。その時、あなたにとって、彼が一番大事な人で、彼が何を必要としているかに興味があり、彼のことを心から気づかっているということを分かってもらう

ステップ-2

くつろがせるだけでは、不十分である。実際はどうであれ、自分と同化した人間に囲まれていて、自分にふさわしい場にいて、そこで、今だけでなくこれからも取引や買い物をするのだということを顧客に示す。これは、あなたが客に同化することで達成される。そうすればクロージングは容易い。トップ営業マンが使う決定ボタンである。

 

<マイクから一言>

あなたが対応しているお客様が、どう考えても、どう見ても、自分とは違う種類の人間である場合、クロージングする上で不利になってしまうのでしょうか。あなたは、そのハンディをコミュニケーションという武器を使って、その人に同化することで簡単に克服することができます。(こいつも俺を同じように感じているのだということを実感させる)この場合、決定ボタンとともにコミュニケーションのテクニックを駆使する必要があります。あなたは、どう考えても自分と違うバックグランドを持った、性格も違うプロスペクトに日々対処しなければなりません。

その時あなたは何ができますか。共通点を見つけ、プロスペクトがあなたに共感できる話題を提供しましょう。

例えば、あなたがある銀行の支店長に保険商品を売っている営業マンであったとします。彼はあなたと全く違うタイプの人間です。雑談中に彼が、「日銀総裁は何を考えているのか分からないよ。マイナス金利政策のメリットは無いと思うよ。」と言ったら、プロスペクトと同化するチャンスが生まれます。あなたは、「私は難しいことは良くわかりませんが、マイナス金利が世の中を良くするなんて信じられませんよ。」と同調します。(ただし、通常、あなたは時事問題に関して、自分から意見を言ってはなりません。プロスペクトが逆の意見を持っているかもしれないからです。)これで、この支店長からあなたへの親近感は、少しだけ上がります。彼は評論を始めるかもしれません。そこであなたは傾聴の技術を使い親近感を更に高めるのです。(1-51-6のマイクの一言を参照してください)これが同化の第一歩です。他にも同化ネタ(同調ネタ)はあるはずです。相手のコメントをヒントにして探してください。

この人は自分と同類なのではないか、同じ価値観を持っているのではないか、同じことに感動し、共鳴してくれるのではないか、共通の敵を持っているのではないか、言葉で説明しなくても自分の思いを感じ取ってくくれる人なのではないか、などと思わせることが、たいへん重要です。それができて初めてプロスペクトと同化できるのです。プロスペクトと同化できないと、いくら商品知識があっても売上は伸びません。

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