クロージングに特化したプロ
<プロのクローザー>
多くの組織は、散発的で行き当たりばったりのダブルチームを組むのではなく、営業マンとチームを組み、クロージングに対応することを仕事にしているプロのクローザーを配置しています。(訳注 クローザーを配置している日本の組織は、ほとんどありません。日本でできることは、上司や指導員をクローザーと見立てて、協力を要請することくらいです。クロージングというプロセスを専門化した方が良いという考えが生まれるほど、クロージングテクニックの奥深さや、ダブルチームの効果があるということを覚えておいてください。明確な役割分担と専門性の強化による利益の最大化は、日本企業より米国企業が得意な分野です。これは、レッドテープ(役所的やり方)とは本質的な違いがあります。レッドテープに利益の最大化の概念はありません。あるのは効率や利益を無視した、書類手続き絶対主義、自分の役割以外の仕事は絶対にしない習慣だけです。)
クロージングだけが彼ら職責なので、通常は待機状態です。規模の小さい組織では普通の営業マンにクロージング能力の割増手当を払うことで対処しています。
いずれの場合も彼らの能力は実績で裏打ちされています。彼らは難しいクロージングを成功させる巧みな技を実証したことがあり、賢明な営業マンは必要と感じたら必ずクローザーを利用します。
プロのクローザーの効率の良さはクロージングに集中することから来ています。彼は、最終トータル以外の売上目標やプロスペクト新規開拓、営業記録の整理、顧客のフォローアップなどに煩わされません。
彼の唯一の仕事は営業マンと協力してクロージングすることであり、クロージング及びパートナーのためにクロージングを達成する最も効果的でベストな方法以外に彼の時間や思考に入り込んでくる余地はありません。
<リードせずフォローせよ>
クローザーとチームを組む場合、彼をリード(先導)してはなりません。彼をフォロー(追随)するのです。
プロスペクトに会う前に、売り込みに対してどんな反論がありそうか、どのようなタイプのプロスペクトと彼が直面するのか、プロスペクトの簡単なバックグラウンドなどをクローザーに説明しなさい。そうすることで、彼の才能が、最も効果的に発揮されるのです。
自分の役割とパートナーのことをよく理解しているクローザーは、要点をプロスペクトの頭に叩き込んだり、事例を強調するときにパートナー(営業マン)を使います。彼は自分の会話の説得力を高めるため、どのようにあなたにリードさせて、どこで引き下がるかを心得ています。あなたも同様に、自分が会話に介入するタイミングと、引き下がって彼に主導権を返すタイミングを認識できなければなりません。
彼はクウォーターバック(アメリカンフットボールでセンターの後ろに位置してパスを受け、プレーの起点となり攻撃を指揮するプレーヤー)なのです。あなたは、彼からボールをパスを受けたら、一刻も早く彼にボールを返すのです。二人が同時に会話の主導権を握ろうとすると、プロスペクトは方々に引っ張りまわされてしまい、決してクロージングすることができません。
<ダブルチームでの努力を台無しにしてしまう行為>
ここにディックというクローザーがいて、テッドとダブルチームを組むとします。彼らはパーキンス氏との工場用地の売買契約をクロージングしようとしています。その土地は比較的新しい工業団地の分譲地で、近辺には既に工場がいくつかありました。
「パーキンスさん、この近所にはアライド・ペーパーカップ社があります。半年ほど前に引っ越して来ましたが、ここに移転を決めてたいへん満足されて...」
ここでテッドが介入します。「そうなんですよ。でも、最初はちょっと大変でした。水道からの供給がなかなか始まらなくて...まったく、水道局の連中は役立たずで...」
「御社とアライド社とは良い近所付き合いができると思います。お互い関連した業界ですよね。お聞きしたところでは、御社は紙のワイピングクロス(拭き取り紙)を製造されておられるとか。原料や仕入品の交換とか、いろいろと協力できることがあるのではないでしょうか。あの会社の購買部長はなかなか素晴らしい人物で、彼は...」
「そうなんですよ。私がクロージングをかけて彼に売り込んでいた時、何度もランチを一緒にしたのですが、全部払ってくれたんですよ。親友のようになりました。先週などは、いっしょに釣りに行って...」
会話という船の針路はどうなっていますか。テッドは船を転々とさせているだけでなく、自分の乗っている船の位置が完全に分からなくなっています。彼が黙ってディックに会話の主導権を握らせていたなら、プロスペクトが契約にサインする可能性をもっと高めることができたはずです。彼はそのために呼ばれたのです。
次のようにやる方が、ずっと良いのです。
「パーキンスさん、近所にはアライド・ペーパーカップ社があります...この場所に移転してきたことを喜んでおられます。実は、テッドはアライドのある幹部の方と釣りができる仲になっております。なあ、テッド。」
「そうなんです。ジョージ・ダウさんという人です。購買部長です。御社と彼は仕入れの協力ができるのではないでしょうか。消耗品が切れたときに交換するとか。人柄も良い感じの人できっと良い友人になられるのではないでしょうか。」
「間違いなく良い友人になると思います。ところで分譲地の中まで鉄道の支線が入ってくる計画がありますので、テッドが説明します。」
「鉄道会社と今日話してきたのですが...」
ここではディックがパスを出し、テッドがボールを受け取りますが、言われたことを説明したらできるだけ早く会話の主導権をディックに返すのです。
<マイクから一言>
二人で顧客訪問する場合でも、テーマ毎にどちらが顧客に何を伝えるかが決まっている場合は別として、事前にどちらがトークの主体になるのかをお互いの合意の上で決めておくべきです。この事前の確認は、非常に大事です。なぜならば、営業マンが顧客訪問したからには、面談中、ずっと黙っているわけにはいかないと感じるのが普通だからです。主役を決めておけば、落ち着いて話を振ってくるのを待つことができます。逆に主役は、効果的なタイミングもう一人の脇役に話を振るべきです。そうでなければ、二人で訪問した意味は、ほとんど無くなります。100%一人だけでしゃべるのであれば、最初から一人で行くべきです。もう一人がいる理由は、本文でレス・デインが紹介いる通りです。脇役は、主役が話を振りたくなる事例や得意分野、権限、権限のように感じさせるものをベースにしたトークネタを用意しておくべきです。(権限者は、面談に応じて、主役にもなれば、脇役にもなれます。)
私がバイヤーとして経験した最悪のケースは、ダブルチームではなく、上司と部下二人のトリプルチームでの訪問を受けた際、部下二人が競い合うように、営業トークを繰り広げてきたときです。聞いていて、二人が上司に認められるためだけに、こちらに向かって話しているように感じたのです。話す内容もお粗末でしたので、当然、クロージングに向かった次の面談はお断りしました。優秀な上司はプロスペクトとの面談前、部下に「今日は、俺が話すのを聞いていればいいからな。」などといいながら、絶妙なタイミングで、あなたに話を振ってくれます。そんな上司を持った人はラッキーです。

