クロージングのための3つの絶対ルール

私が今まで見た中で、最も驚くべき集団催眠の事例は、ノースキャロライナの営業セミナーでの出来事です。演台に立った男は、いくつかの大学を出ている非常な成功を収めている営業マンであり、セールスマネージャーであり、心理学の営業への応用で有名な人でした。

3日間続くセミナーの初日に、彼は講演しながら全員に催眠術をかけるつもりで、それがいつ行われているか分からないので、拒絶することはできないと言いました。

もちろん、彼は催眠術で私たちを犬のようにワンワンと吠えさせようと考えていたわけではありません。それでも、私たちに催眠術をかけようとしていることには、変わりありませんでした。

午後に入って、この種の営業セミナーでよく話されるような普通のレクチャーをいくつか行った後、彼は戦術を転換しました。それはわずかなことで、非常にスムーズになされたのですが、転換であることには変わりありませんでした。

その変化は一部の参加者に気づかれるくらいで、極端で人をびっくりさせるようなことではありませんでしたので、ほとんどの参加者は集団催眠のことを忘れてしまっていました。

3日目に入ったときに、それが分かりました。

彼は見込み客をポジティブな気持ち、「買い」の気分、「賛同」の気分に保つことの重要性を訴え続けて(売り込み続けて)いました。それが、2日間余りの彼の話のテーマでした。

3日目の昼食後、彼は我々にプロジェクターを使うことを告げました。動画を取るカメラを持った男は、経営者の参考になる記録を撮ると言っていましたが、実際は集団催眠実験の一部を撮っていました。

彼がした転換とは、簡単に肯定できるような簡単な質問を繰り返していた、その合間に時折、突飛な質問を割り込ませたことです。

カメラが水平回転して部屋全体を取った画像には、彼が言うすべての言葉にうなずく我々受講生の姿が映っていました。時々、カメラは彼の方に向きを変えましたが、そこには、しゃべりながら、なだめるように穏やかに頭を何度も上下させる彼の姿がありました。

我々は賛同することに忙しく、私を含めて何人かは、彼が言った突飛な言葉、「もし顧客が契約書へのサインを拒否したら、あなたは最後の手段として、彼の顔をひっぱたきます。当然ですよね。」とか「この町には、火星で生まれ育った人たちがいることを、もちろんご存じですね。」などの突飛な言葉に、催眠術にかかったように、何度も何度もうなずいていました。

我々は半分眠っていたわけではありません。酒に酔っていたわけでもありません。本当の意味で催眠術にかかっていたわけでもありません。我々は単に、周到に準備され、上手く遂行された、賛同誘発術に反応して、彼が何を言おうが、言うことすべてに賛同してしまっていたのです。前もって警告されていたにもかかわらず、です。

あなたがプロスペクトに、商品やサービスを彼にとってどれほど必要なのか説き、製品がボロボロになるまでデモを行い、会社の損になるくらいの譲歩をしても、買うこと自体への反感という態度を彼が取り続ける限り、クロージングすることは絶対に無理です。

 

<マイクから一言>

賛同誘発術とは、「賛同」という意味を込めて、必ずうなずいてしまうような簡単な質問や言葉を、自分も軽くうなずきながら繰り返すことで、相手を「賛同」の気分、「買い」の気分にさせる方法です。これも古くからあるテクニックですが、最新のセールステクニック本でも、あたかも独自理論のように語られています。必ずうなずいてしまうような質問には、売込んでいる製品にかかわるものもあれば、一般的なものもあります。

自動車の売り込みを例にとると、自動車に対してプロスペクトが当然のこととして求めていることを質問や言葉にすることです。「運転が楽しめる車って、良いですよね。」「昔のモデルと比べて、乗り心地も良くて、燃費も良くなってきています。」「どんな事故があっても、ご家族の安全が一番大事だと思うんです。」「ダッシュボードの見やすさは、大事ですよ。」こういった質問や言葉を出したときに、「当たり前だろ」と言って怒る人はいません。あなたのうなずきを、相手にうつす努力をしてください。自信とポジティブさが伝わるほほえみと、大げさすぎない、自然なうなずきを繰り返してください。

購買後の満足感や幸せ感を想像させるような、賛同誘発も大切です。「この車で、高速道路を走ると気持ち良いでしょうね。」「お孫さんは、お喜びになりますよ。」などなど。賛同誘発のコツは、「ノー」と言うことに意味がない質問や言葉を大量に、次から次と矢継ぎ早にするということです。ただし、相手が何かしゃべり始めたら、その瞬間に傾聴することに集中してください。

プロスペクトに賛同の気分にさせながら、傾聴のテクニックなど、様々なクロージングテクニックを使ってください。威力が倍増します。

 

<勧誘セールスについて> (注 英語では冷たい雰囲気の中で行う営業なので、コールドセールスと呼ばれる)

本質的に、勧誘営業 (Cold Contact) は、プロスペクトの全体数を増やしながら、相手の心を閉じた状態から開いた状態にもっていかねばなりません。したがって、相手の方から買いに来ているプロスペクトへの営業とくらべて、エネルギーが必要となります。

勧誘営業は、冷たくされるという意味で(英語圏では)Coldと表現されますが、実際はCool (冷静)と呼ばれるべきです。

これといったプロスペクトからの要求が無い、あるいは、製品やサービスに対する確固たる興味がなく冷静にしているという意味で、Coolと呼びましょう。

しかし、営業マンは通常、何等かの理由があって特定のプロスペクトを選んで、売込みをかけています。プロスペクトは冷たいのではありません。冷静(Cool)なだけです。このタイプのセールスでも何か足がかりがあります。客にアプローチしてクロージングにこぎつけるために、注意を集中すべき何かがあるのです。

一方、自分から興味を持って、あなたにアプローチしてきたプロスペクトよりも、準備やウォーミングアップに時間がかかることも事実です。

 

<3つの基本的MUST>

あなたのプロスペクトがホットな状態であろうが、コールドな状態であろうが、営業トークの中で一貫性を持たせなければならないのは、下記の3点です。

‐あなたが会話をコントロールすること

‐イエスかノーでは無く選択を求めること

‐ポジティブ思考・賛同誘発テクニックで「相手のうなずきをうながす」

<陪審裁判のたとえ>

なぜ、会話をコントロールすることが重要なのでしょうか。裁判に例えてみましょう。弁護人が最終弁論を行っています。憲法は、彼が目撃者、証拠、彼の声、その他彼が持てるすべてを用いて、陪審員に対して被告の無罪の主張を、遮られずに全力で行う特権が与えています。ゆえに検察官はその間発言せず、陪審員たちは聞き、傍聴人たちも静かにしていなければなりません。最終弁論の最中に、検察官にしゃべる機会を与えてしまうような弁護人は愚者です。もし彼が、弁論中に陪審員に質問の機会を与えたり、騒がしい傍聴人などの外部からの妨害を許すようであれば、依頼人に対する責任の負い方がいい加減だと言えます。

この場合、陪審員がプロスペクトです。営業マンは、彼の主張や提案は真実であり、事実に基づいており、彼の製品こそがプロスペクトにとってベストなのだということを納得してもらわなければなりません。

もちろん、傍聴人はクロージングに対する一連の考えや、進展を壊してしまうかもしれない外部からの妨害や介入に例えることができます。検察官は、プロスペクトに同伴してやってきた人、あるいは自説を曲げない傍観者であり、彼らにプロスペクトの決断に対して影響力を持たせるべきではありません。

これらの状況や機会は、営業マンによってコントロールされなければなりません。確かに彼はプロペクトからの質問に答えるか、少なくともそれに礼儀正しい配慮をしなければなりません。しかし、彼はプロスペクトに会話をリードされる必要はないし、実は、されないほうが良いのです。さもなければ、最終ゴールであるクロージングに、決してたどり着くことはありません。

 

<イエスかノーか>

選択させることが、なぜそんなに重要なのでしょうか。ウェブスター英英辞典は「No」という言葉を「否定、拒否、反対するための言葉で、私はxxしないなどのように、あれやこれをしないという、明確で取消し不可能な決断を示す」と定義しています。完全に終わりということですね。

「Yes」は、「私はxxしますなどのように同意や承諾を示す言葉」と定義されています。

それほど最終的でも断定でもありませんね。顧客やプロスペクトが、いったん「ノー」と言ってしまうと彼は本当にそういう意味で言っており、それ以外有り得なかった。そういう経験を何度も何度もしていませんか。「ノー」と言った後に気が変わって戻って来て、「イエス」というようなプロスペクトが、沢山いますか。いないですね。

この二つの言葉は、いろいろな意味で正反対ですが、意味の違いは一つではありません。プロスペクトが「ノー」と言うと、本当に「ノー」という意味ですので、営業マンが彼に考えを変えてもらって、肯定的な返事を得ることが難しくなります。

しかし、彼が「イエス」と言った場合、それは「そうかもしれない。」とか、良くても「私の気が変わらない限りはイエスだよ。たぶん気が変わると思う。」という意味なのです。

「ノー」という致命的な言葉は、それ以上の交渉に門戸を閉ざしてしまいます。成約を逃すことを意味します。この言葉を避けるための論理的なアプローチが必要です。どうしますか。

 

<エバンズさん、どちらにいたしましょう>

破壊的な否定の言葉を避けるための簡単な方法は、選択肢を与えるということです。この場合、あなたが会話をコントロールするのですから、欲しいものがあるかどうかを聞くのではなく、2つか3つ、あるいは4つの可能性のうち、どれを好むのかを聞きましょう。営業マンの立場から、そうすることの良さが分かりませんか。

「エバンズさん、契約書を準備してお持ちしましょうか。」なのか、あるいは「エバンズさん、ご署名いただく契約書をいつお持ちすればよろしいでしょうか。私は午後ずっと空いておりますので、ご自宅にお持ちすることもできますが、どういたしましょう。」なのか。

最初の例では、客が「いいえ」というチャンスを営業マンが与えてしまっています。彼は、すべての下準備やセールスプロセスのやり直しをすることになるかもしれません。プロスペクトがそうさせてくれれば、の話ですが。

2つ目の例では、質問ががんじがらめになっていませんので、エバンズ氏は「ノー」と言えません。「ノー」と言うのをずっと難しくしています。最終決断を要求することではなく、選択肢を与えたのです。

 

<スターター>

勝つための三つ目のクロージングテクニックは、うなずく基調のトーク、正しいことを確信しているポジティブさによってコントロールされた会話です。

もし、あなたがスクリュードライバーを買いに金物店に入り、電気芝刈り機をちょっと見るために、売り場にふらっと入っていった時に、次のどちらのセールストークで買う気になりますか。

「おはようございます。いらっしゃいませ。」

「ありがとう。見ているだけだよ。実はスクリュードライバーを買いに来たんだ。」

「はあ。ここに小型の良いものがありますよ。自動のスターターはついていませんが、89ドル95セントでこんな良いものはありませんよ。」

「なるほど。そうだね。スクリュードライバーはどこだね。」

「ちがう売り場に置かれていますよ。担当が違いますのでご一緒できないんですよ。この芝刈り機なんですが...あ、ちょっとお客さん...」あなたは、みじめに取り残されます。

こういうのはどうです。

「おはようございます。ちょっと見ていただきたい機械があります。本当の優れもので、今週限りの特別値引きをさせていただいております。」

「自動のスターターはついているの。」

「これは、0.5エーカーまでの小さい敷地用にデザインされています。通常の面積の芝を刈るには十分なパワーがございまして、起動も驚くほど容易です。巻き取り機能もあって馬力が小さい分、子供が持ち運べるくらいの重量しかありません。」

「うちの小さい敷地には、ちょっと大きすぎるくらいだな。自動起動装置などいらないね。このつまみは何だい。」

「それはチョーク(空気吸込調整装置)です。半分開いた状態にセットしてあります、コードを引いてみてください。このコードは切れにくいステンレス製で、プラスチックボックスの中に納まっています。作動するのを見てください。さあ、起動してみてください。そうです。」

「スムーズでしょ。音も大きくありません。」(あなたは軽くうなずきながら、プロスペクトからのうなずきを誘発させようとします。)

「マフラーです。マフラー付きの最新のモデルですよ。お支払いはどうされますか。現金払いですか。クレジット払いにしましょうか。今週中は、89ドル95セントで値段を抑えてあります。現金一括にされない場合でも、分割払い手数料や頭金も受け取りません。」

「実は、スクリュードライバーを見に来ただけなんだが...」

「承知しました。帰られる前に用意させていただきます。その間に、ぜひ知っていただきたい事がありますので、聞いていただきたいのです。この集塵器を一緒に使ってください。刈った芝はここにたまっていきますので、後から熊手で草かきする必要がなくなります。」

どちらの営業マンが注文を手にしたかは明らかです。

Share