もう一つの前例タッグ - 先輩営業マンの力をかりる

ラリーは室温の自動制御システム、インターフォン、セントラルバキュームシステムなどを数週間にわたって、あるプロスペクトに売り込んでいました。

コストやニーズついての普通の反論については克服しており、次の最後の訪問、つまりクロージングの訪問に備えていました。彼はまだ新入社員で、未だ一人で行かせるには少し不安があったので、T.O.(Training Officer: 指導員)に同行を依頼しました。

プロスペクトの家に着いた時、奥様が二人を出迎え、家の中に案内してくれました。そこで目にしたのはプロスペクトが書斎の中でカタログの束に目を通しているところでした。これはT.O.にとっては簡単に見抜ける危険だったので、彼は何を言ってくるか知りながらも、言葉に耳を傾けながら、機会をうかがっていました。

ラリーがその妻にもう一度、数字の説明をし、機器の働き、バキュームの差し込み口がどこにあるかなど、いろいろ説明した矢先に、男性が出てきて爆弾を落としました。

「今夜はわざわざ訪問してくれてありがとう。あなた方の商品がベストで最安値だと思う。でもエリート社も検討しようと思う。この話を進める前にね。」とラリーにフォルダーを渡しながら言いました。

ラリーの顔はくもりました。すぐにクロージングの時を迎えることができると確信していたからです。

T.O.は、フォルダーが目に入ったときに何が起きるかを察しました。よくある「他も見てみたい」と客が言い出すケースです。

ラリーは口の動きで助けを求める合図を出しましたが、その必要はありません。彼のパートナーはすでに頭をフル回転させていました。

「ジョーンズ様、T.O.という肩書をご存じないかもしれませんが、それは指導員という意味です。私はラリーをトレーニングし、お客様に頼っていただけるような有能なセールスマンに育てる立場にあります。」

「彼は会社のために良い仕事をしてくれています。彼より売り上げがある連中はいます。しかし我々の営業部には、この男ほどお客様の面倒をよくみる人間は他におりません。」

「さて、ジョーンズ様、奥様、ひとつ聞いてください。私はラリーが注文を取るのを助けるために来たわけではありません。彼は受注するにしても失注するにしても自分自身の力でやらなければなりません。私はただ彼のマナーやセールスの仕方を監視しているだけなのです。だから、お客様に買っていただくために、彼の仕事を助けようとしているわけではありません。」

「しかし繰り返しになりますが、一言だけお客様のために言わせてください。普通、私は立場上、自分が教える営業マンとお客様との商談に顔を突っ込むことはありません。しかし今回は、そうすべきだと感じています。」

「私はプロのセールスマンで正直なビジネスマンです。ラリーもしかりです。私はエリート社でセールスマンとして2年間いたことがあります。今回ラリーがお売りしているものはエリート社のものより少し値段的に高いですが、製品としてより優れているという現実を分かり過ぎています。実は今の会社に来たのは製品の魅力のせいでした。」

「私どもはセールスの社員に、自分たちの製品とサービスが値段を比較しても最高のものを提供しているという事実を叩き込んできます。この事は昨日であろうが10年前であろうが変わりありません。」

「私が口をはさんでしまったことをご容赦くださればありがたいです。どうしても自分を抑えることができませんでした。さて、十分にお時間をいただいてしました。ラリー、行こう。お二人には、どうされたいか今晩じっくり考えていただこう。明日コンタクトさせていただきなさい。」

「カズンズさん、こちらにもどっておかけください。あのバキュームで掃除するのは私だし、一日中家の中にいるのも私なのでひとこと言わせて。」

彼女は夫に向かって、「あなた、私はこういうのが欲しいわ。見た目も良いし、カズンズさんは専門家よ。もし、あの安いやつより、こちらのほうがずっと良いってことが分かってなければ売ろうとしなかったはずよ。」

これで決まりでした。お分かりでしたね。

T.O.は、彼自身のセールスマンとしての経験からの事例を使いましたが、敵の商品をけなさずに、自分自身の商品の良さを強調し、より安い競合品を退けてクロージングすることができました。

 

<マイクから一言>

営業マンは日々競合する商品を売る営業マンと戦っています。その中で自分の製品やサービスと比べて、競合品のほうが劣っていることを仄めかさねばなりません。自分の商品の利点を強調するときも、その目的は競合品に対する不安や競合品の劣っている点にプロスペクトの注意を向かせることが重要です。直接的な大人なげない言い方で敵の品物をせめてはなりません。相手の欠点を間接的に強調するために、良いところを褒めても良いくらいです。あなたと話しているうちに、いつの間にかプロスペクトが競合品よりあなたの製品の方が優れているかもしれないとか、安心できるとか、そういった印象を持ってもらうのが理想です。

「X社の製品Aの方が、君の会社の製品Bより安くて、性能もいいじゃないか。」と言われてしまったとき言ってはならない言葉があります。「そんなことはありませんよ。」「誤解されているようです。」というような客の行ったことを否定するような言葉です。客の疑いは無くなりません。たとえ、敵の営業マンが嘘をついて、あなたの会社の製品のブラックPRをしていたとしても、感情的になって、「それは嘘ですね」などと言っても、火に油を注ぐだけです。

まずは、客の気持ちを受け止めてください。いろいろな言い方があると思いますが、次のように言うのはどうでしょう。

「なるほど、そうお感じになられているのですね。確かに値段は安いですね。よくわかりました。ところで、私でもの製品の良さについて、お伝えしきれてないかもしれません。」といいながら、自分の品物の利点を示す事実をたんたんと伝え続けなさい。その事実の中に、なにげなく、敵に営業マンが言ったことが嘘である証拠が入っていると、抜群に効果的な反撃となるのです。

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