<クロージングが本物のクロージングとは限らない>

もし、顧客がクロージングの2時間後、あるいは翌日に、電話で延期やキャンセルを申し入れてくるとか、ちょっと待って欲しいとか、買った品物が思っていたものとは違ったなどと言ってきたら、クロージングはクロージングでなくなります。

あなたの身にも、起きたことがありますね。あまりにも、頻繁に起きるのです。そして、そその原因のほとんどは営業マンの失敗のせいだと言っても過言ではありません。クロージング時に完全な仕事をこなし、すべて決着させ、納品できる場所に納品していたならば、キャンセルが試みられることなかったのです。

優秀な営業マンは、たとえキャンセルの依頼があっても、クロージングのプロセスをやり直すことなく、こういった状況を切り抜ける方法を知っています。もう一度、クロージングするための時間や労力を費やすような2度手間をすることはありません。

 

 

あなたが売っているものが、お墓であれ、自動車であれ、信託投資商品であれ、クロージングの手順の中の必須事項として、2つの基本的な予防手段があります。これらのキャンセル予防手段は、プロスペクトの気が変わり、キャンセルしようとする試みを避けるための、他のどんな言葉や手段よりも効果的です。

<署名と捺印 そして 納品>

2つのキャンセル予防手段のうち、第1番目が、どう考えても1番重要である理由は、プロスペクトが買うことを決めた後の、一連のプロセスの最初にやらなければならないことだからです。

このことが真実である理由は2つあります。それは、プロスペクトが契約書に署名した直後にできることであり、どんなクロージングにも当てはまることだからです。これをやっておくと、2番目の予防手段は、必要なくなるくらいです。

プロスペクトが契約書に文字を入れ始めるか、その製品やサービスを買いたいと言ったら、直ぐに必ず、すべての必要書類(関連書類)をすべて完成させてください全部です

私は、営業マンが一部の書類を後回しにするという過ちを犯すのを数えきれないくらい見てきました。ジョーンズさんが契約書にサインしたとか、注文依頼の連絡をくれたという理由で、一部のペーパーワークを後回しにしても大丈夫だと思ってしまうのです。

その1時間後に客先から会社に戻って来た営業マンは、考え直したバイヤーから「再検討したいので取引を延期したい。」とか「後から、その件でもう一度話したいことがある。」という電話を受けるのです。(私自身も、帰社した時に、そのようなメッセージを受け取ったことがあります。)

普通、営業マンは次のような反応をします。「それって、どういう意味だろう。契約書にサインをもらっているのに...私に何をしろと...」

私が、何をするのですか。私ができることは何もありません。お分かりのように彼が再検討を決めたら、それに対して、ほとんど何もできません。法的には、契約は契約です。しかし、誰でも知っているように、取引が完了して、納品と回収が終わるまでの期間、契約書の束縛を受けるのは、売り手だけなのです。

この種の問題で、売り手の企業が訴訟を起こしたり、契約後のキャンセルに対して論争を巻き起こすのを見たことがありますか。ごく稀にしかありません。せいぜいできることは、相手の良心に訴えるということです。

解決策は、取引を完全に終了させるための準備をすることです。服の切れ端が残ってはなりません。残っていないと、協定が守られる可能性は、うんと高まります。次の日まで、やり残した6つものペーパーワークに時間をかけていたのでは話になりません。

<出張型オフィス>

数年前の夏季休暇中、自宅から1200マイル離れたところで、朝食を取るために国道沿いにあるレストランに立ち寄りました。そこはカナダとの国境から真北400マイルのところでしたので、誰かが私の肩をたたいて、「たまには休みを取るんだね、レス!」と声をかけられた時には、びっくりしました。

彼は、私と同郷の人間で、地元のボート工場のセールスマネージャーとして、カナダからサザンアイランド、そして東海岸に沿って、南にある地元の拠点まで地域に販売ツアーをしていました。

私が家族をバートに紹介すると、彼は私たちのテーブルでコーヒーを飲みながら、ここ数か月間、売上が下降しているので、業績を回復させるための販売ツアーをしていると話してくれました。

「この販売ツアーは、自分が会社に入って最初に出したアイデアで、5年間続けてきたんだが、最近は売上の減少が続いていた。ツアーを始めると大量に受注はするのだが、後からキャンセルが入ってくるんだ。」

「どこに問題があったのか、どうすればキャンセルを減らすことができるのか、状況を詳しく調べたので、朝食が済んだら見てもらうよ。」

彼の会社のことは、多少知っていました。他社と比べて規模は小さいけれども製品は良く、サービスのポリシーもしっかりしていました。大手メーカー製の船外モーターや船内エンジンの代理店もやっていました。

その販売ツアーを年2回行っていることも、前回のツアーで売れた船を納入しながら、受注活動をしていることも知っていました。

営業マンが、どのように注文を処理しているかについても教えてくれました。彼は、内示をもらい、注文書にサインをもらい、手付金の小切手をもらい、バイヤーに「その他の書類は別途お渡しするので、2-3週間以内に送り返して欲しい」と言っていただけでした。

「その2-3週の間に殺られてしまっていたんだ。実際のところ、キャンセルするための時間を2-3週間与えていたようなものなんだよ。客は、一度、キャンセルを決めたら、テコでも引き下がらない。」

外に出て、彼は胴の短い牽引トラックのところまで、私を連れて行きました。それには、

高さ5段、横3列、縦4列のトレーラーが繋がっていて、60隻のボートが載っていました。1隻当たり1500ドルはしそうに見えました。

後ろ側には、合板でできたボックスがあり、開き戸が付いていました。彼に案内され、鍵を開け、中に降りていくと完璧な事務スペースがありました。タイプライター、注文書、契約書、領収書のフォームなどが入った書類整理ボックス、会社で在庫している船やモーター1つ1つのシリアル番号のリストなどがありました。

「毎晩、電話で発注手配をかけて、在庫リストをアップデートしているんだ。そうすれば、注文が入った時に、特定の船を顧客に指定できる。赤に白いトリムの14フィートの漁船とだけでは不十分だからね。」

「ここでの目的は、その船を買えば、それはもう出来上がっていて、その場で彼に割り当てられることを顧客に分かってもらうことなんだ。」

「受注したら、すべての事務手続きを完了させる。納品以外のすべてだ。納品もできればいいのだが。書類に署名、捺印され、納品されるまでは受注に満足できない。しかし、署名とともに印鑑が押されれば、良い方向に向かっていることは確かだ。」

「最近のツアーでは、184隻の注文と取ったが、キャンセルをくらったのは、たった4隻だった。そのキャンセルは、メイン州の湖畔にあった代理店の人からだったが、私が彼と会った2日後にその店で火事があり、破綻したという事情があった。すべての取引は完了していたので、うちの社長がそうしたければ、契約を履行させることもできた。とにかく、その場で注文契約の関連書類をすべて完了させるというやり方に変えただけで、すばらしい効果があったよ。」

時には、プロスペクトが急いでいて、ペーパーワークや署名、捺印に時間を取られたくないと言って、後回しにしようとします。それがトラブルのもとになります。

彼が急いでいたり、書類の作業に時間を取られたくないと言い出す時は、しばしば、迷いが有ったり、キャンセルを考え始めていることがあります。昔からそうでした。

出来るだけ用意しておきなさい。前もって書類の中に書き込めることは書き込んでおきなきなさい。プロスペクトが注文した仕様や内訳の詳細も用意しなさい。そして、その場で売りを確定させるのです。

もし彼が現金で払うというのなら、なぜ、手付金だけなのですか。一歩踏み込んで、全額払ってもらいましょう。もし、小切手が手元にないのなら、彼のために取ってきてあげなさい。少しでも心配な点があれば、すぐにその小切手を現金化して、支払停止が出来ないようにしなさい。なぜそうしたのか、後から説明を求められたら、答え方はいくらでもあります。こんな簡単なことをしただけで、彼のキャンセルしようとする試みを打ち砕くことができます。彼が銀行に電話しても、すでに小切手の現金化が終わっていることを知らされるだけですから。このことで彼は、自分が取引したこと、あなたが信頼に応えたことを再認識するので、約束を破ろうなどとは夢にも思わなくなるのです。

<ダミーの納品>

バートはもう一つの予防手段についても話してくれました。それは、いつも可能ではありませんが、可能であるならば、商品をできるだけ早く納品してしまうということです。

もちろん、バートのケースのように、その場で納品できないかもしれません。しかし、可能ならば、第1番目の予防手段にプラスして、納品というもう一つの手段を使ってください。

保険契約の内容が本社での承認待ちとか、これから新車の手配をかけたり、投資商品のポートフォリオを組んでいく場合、直ぐに納品というわけにはいきませんが、即納できる製品やサービスも多くあります。そして、本物が納品できない場合でも、ダミーを納品してできることがよくあります。

私は車を売っていた時、よくダミーを納品しました。他の営業マンと同様、私も試乗車を持っていましたので、即納できない注文と取ったときは、その購買者(彼は、まだプロスペクトです。)をその車に乗せてしまうのです。

もし彼が、そこまで甘えるわけにいかないとか、あなたの交通手段がなくなるとか言って、拒んだりしたら、私はより一層、強く勧めたものです。たいていの場合、購買決定を考え直し始めたと感じたからです。彼を試乗車に乗せた方が、迷いによるキャンセルを、少しでも遠ざけることができることを、私は知っていました。事実、彼に、私と私の会社からの恩(彼が嫌がっていることそのもの)を売っておけば、注文を確定させ続ける可能性が高まりました。私は、そのことも知っていました。

<同行させていただきます>

心変わりというお化けに事前に対処する、いい方法を、ある保険の営業マンが教えてくれたことがありますが、大変効果的です。

すべてのペーパーワークを済ませ、必要な署名をとりつけ、すべて完了させた直後、彼は「身体検査」の段取りをしました。予約時間が決まったら、その30分前に、車で迎えに行くことをプロスペクトに伝えます。

「病院は自分で見つけるよ。君の手を煩わせることは...」

「ジョーンズさん、大丈夫です。これも私の仕事ですから。それに、ドクターにもちょっと話すことがあるので、一石二鳥なんですよ。」

そう言いながら話題を変えて、段取りが終わったら購買者から立ち去ります。彼に、車の出迎えと検診場所への送迎は要らないと言わせないためです。

そうすることで、彼は3つの事を成し遂げていました。後から起きるかもしれない、プロスペクトの心変わりの芽を摘みながら、潜在的なキャンセルの可能性が大きくなりそうなら、そのことを見抜きました。それを事前警告と受け止めていたので、キャンセルと戦うための有利のポジションにいたのです。その場合、購買者に更なる恩を売りました。

ペーパーワークをすべて終わらせ、契約書や覚書に署名、捺印を済ませることは、プロスペクトからのキャンセルに対する心理的な抑制材料になります。

そして、もう一歩進んで、可能な限りクロージング直後に納品してしまう。営業マンが納品という強い手段を取っていると、購買者は、めったなことではキャンセルしようとはしません。納品によって、購買者が契約を守ることを余儀なくされるのです。裁判所に行って、その製品を受領し、契約が完全に遂行されたが、その契約をキャンセルすることにしたと言えるようなプロスペクトはほとんどいません。

ある有能な営業マンが言っていました。「売上げの手数料のことを考え始めるのは、納品が終わった時だ。納品さえしていれば、プロスペクトがキャンセルしようと試みることは、ほとんど無くなるし、何となれば、コミットしたことを守るように、圧力をかけることができる。私の知る限り、納品イコール完全なクロージングであり、キャンセルは無い。」

注文を確定させるために、ありとあらゆることをしなさい。場所がどこであれ納品し、納品できない場合は、プロスペクトに恩を売ったり、義務を負わせるなどして、契約を守らせるための、別のテクニックを使いなさい。彼にとって、キャンセルを困難にすればすれほど、あなたの売上物件のファイルは、分厚くなっていくのです。

<マイクから一言>

あなたが競合品と戦って、相手に受注されてしまったとします。この場合、競合相手にとって恐ろしいのは、プロスペクトの心変わりです。心変わりして、やっぱり、あなたから買うこととなることが、一番恐ろしいのです。あなたが、購買者を再考させ、キャンセルさせ、逆転の受注に結び付ける可能性がゼロではありません。なぜならば、敵のわきがあまく、キャンセルの予防措置を全く取っていないこともあるのです。特に、競合相手より一足先に新モデルや新製品が出たときはチャンスです。もし、競合会社(X社)があなたの会社に一歩遅れて、同等の性能の新製品を出してきそうだと、経験上感じているのなら、プロスペクトにこう言ってやりなさい。「弊社とX社は、常に開発競争で競り合っています。間違いなく、今回の弊社の新製品の新機能に近いものも、近々つけて発売するはずです。(決して断言してはなりません)私どもは、昔から、熾烈な開発競争を繰り広げてきましたので、わかるのです。」プロスペクトはどう思うでしょう。「X社のあいつは、もうすぐ、新製品が出るのを知っていながら、旧型を売りつけやがったな...」そして、あなたは、あなたの会社の新製品の新機能の魅力を十分にアピールした後、おもむろに言います。「ところで、X社との契約はもう済まされたのですか。納品日はいつですか。弊社の新製品のことを、もう一度検討していただけるようでしたら、直ぐにとりあえず、玉(ぎょく)を抑えておきますよ。今月中の出荷分が、まだ、残っている可能性があります。」などと言って、敵の製品のキャンセルを誘うのです。

あなたは、競合会社の営業マンに逆転されてはなりません。それほど、恥ずかしいことはありません。

逆転勝ちしてください。これができてこそ、トップ営業マンです。