<呼び戻す>
理由があって、納品ができていない、回収ができていない、あるいは書類による手続きが完了していない状況にある場合、あなたは、これから説明する3つの呼び戻し法のうち最低1つを使わなければなりません。
呼び戻し法は、その言葉通りです。キャンセルの試みをくじき、プロスペクトに決定済の売買契約を守らせるようにもっていくのです。
本来、これを次の3つの方法のうちの1つによって達成します。取り決めを守ってもらうべく説得する、同情をさそうことで実行させる、署名済みの契約書の内容を守ってもらうことを強制する、の3つです。実際、キャンセル阻止の方法は数多くあります。あなたは、基本的なメソッドを理解したうえで、自分なりのバージョンを創作することができます。
<良心の呵責>
私が好きな営業マンのうちの一人が、彼の得意とする「呼び戻し」法を説明してくれました。プロスペクトは、取り決めを破ろうとしていることに罪悪感を覚えています。彼は営業マンに悪いことしてしまうこと、取り決めをしたこと、そして取り決めを守るべきなのだということを知っています。個々のプロスペクトによりますが、彼の罪悪感を感じ取ると、私は彼の良心を利用します。
1つ例を挙げてみましょう。電話でのキャンセルの架空の会話です。
「ハリスさんですか。ジョーンズです。何時間か前に、ズーマーデラックスを見て帰ったものです。」
「ジョーンズ様、青い4ドアをご購入になりましたね。」(購入という部分を最も弱い調子で)
「うん、そうだけど、ハリスさん、実はちょっと考えたことがあって...あの車は良いと思ったんだけど、分かってくれるかな...買うのをちょっと延期したいんだよ。」
(ここで答える前に、たっぷりと30秒ほど沈黙を守ります。自分の耳が信じられず、ショックの大きさから何を言って良いかわからない様子で、彼の良心が働き始めるのを待ちます。)
「え、延期ですか?」
「そうなんだよ。悪いんだけど...」
「ははーあ!さては、ご冗談だったんですね。参りました!一瞬、信じてしまいましたよ。
本気でおっしゃってると、一瞬ですけど思ってしまいました。さっき結んだ契約をキャンセルされるんだと思ってしまいましたよ。
(契約のところをあまり強調せずに)やっと理解できました。」
「いや違うんだよ、ハリスさん、私は...」
「冗談でよかったです。(彼はキャンセルをはっきり口にしようとしたので、ここで少し語気を強めます。)手続きは全部終わっておりまして、役所にあなたの車の登記するために人を送っています。まもなく戻ってきますよ。実際のご用件は何だったんですか。」
「用件?ああ、そうだった、うーん...何時に引き取れるかと思ったんだ。言ってくれてたはずなんだが、忘れてしまって...」
「ハリス様、大丈夫です。準備万端で...」
この客は、電話で探りを入れていたのです。私にキャンセルを強く求める前に、そうしようとしていることに対する反応が欲しいのです。
実のところ、彼の声のトーンや口ごもり方で、キャンセルの依頼を断ってほしい、そうしないように説得してほしいと、本当は半分そう思っていることが分かります。
彼は、キャンセルを決め込んでいて、何が何でも取引を反故にしようとしているプロスペクトへの対処法についても、話してくれました。
「ハリスさん、ジョーンズです。先ほどズーマーデラックスを見せてもらったものです。署名済みの書類を持っています。そのことで、話したいことがあります。延期してもらわなければならない、事情が出てきました。実際に購入するときは、あなたにお願いしようと思っています。」(彼が書類のことを口にしたことに気づいてください。キャンセルしようとする人は皆、契約書に署名してしまったことや、あなたに無駄なコストを与えてしまったことを気にしています。クロージングをキープするために、その心理を利用しなければなりません。)
「ジョーンズ様、少々お待ちいただけますか。大急ぎで事務所に戻って、書類が郵送されるのを止めたいのです。」(彼が、それがどういう意味なのかを聞いてくる前に受話器を置きます。その書類が何か知りながら、3分から4分彼を待たせると、彼の良心が、私に有利な方向に動き始めます。)
「ジョーンズ様、私が30秒遅かったです。(「彼の電話が遅かった」のではなく、「あなたが遅かった」のです。それが、彼に逃げ道を与えるのです。あなたのせいにして、最後に彼に取引を受けてもらいましょう。)関係書類や手配カードが工場に向けて発送されてしまったんです。例の契約保証書も入っていました。一度発送されてしまうと、止めようが...申し訳ありません。ジョーンズ様、1つ私にできることがあります。新車の引き取りに来られた時に、ガソリンを満タンにして納車させていただきます。それで精一杯なのです。何とかご容赦いただけませんでしょうか。」
珍しいケースとして、購買者が本当のことを言っていて、どうしても契約を守れない事情が発生する場合があります。この場合は、あたたかく受け入れなさい。後日、購買が可能になった段階で、戻ってくるかもしれません。
ほとんどの場合、プロスペクトはただキャンセルできるかどうか試しているだけなので、上記の方法で注文を維持し、契約を守らせることができます。
良心に訴えることによるキャンセル阻止の方法、その変化球は、いろいろとあります。あなた自身の方法を考案しなさい。ただし、相手の罪悪感を感知することが、あなたの武器であることをわすれないように。
<マイクから一言>
相手の罪悪感を利用して、いろいろな芝居まで打って、キャンセルを阻止するやり方は、出来れば使うべきではありません。まずは、レスも言っているように、2つの重要事項(ペーパーワークの完了と納品)に集中してください。その2つはキャンセルを阻止する上で、たいへんな効果がありますが、2つの手段をすり抜けて、キャンセルの依頼が来たとき、良心に訴えるテクニックを使います。その場合、相手のタイプを見極めることが、重要です。優柔不断で気が弱いタイプの人には、上記で述べられている方法が通用します。営業マンは、彼の優柔不断を利用して、内示や注文をもらっているのですから、キャンセルも言ってくることも多いのです。そのうちの何人かは、ダメ元で聞いてみようとするタイプがいるので、ここに書かれているテクニックを駆使して、阻止してください。
プロスペクトの中には、生まれつき良心や罪悪感が少ない人がいます。また、自分がコワモテのうるさ型、あるいは、知的なうるさ型であることを誇りにしている人たちいます。これらのタイプには、「冗談でしょう」戦法は通じません。「悪いのは私です」戦法や他のテクニックを使ってください。
<すみません。彼は終日外出です>
良心に訴えるもう1つの非常に有効なキャンセル要求への反撃は、何もしないことです。人は、様々な理由で罪悪感を覚えると、一刻も早く荷を下ろしたいと感じます。キャンセルを試みている時も同様です。逆に言えば、肩の荷を下ろすのにかかる時間が長ければ長いほど、肩の荷を背負うような経験はしたくなくなります。
私は、クロージングした直後は、別件に忙しく誰とも話ができないということにします。午前中にクロージングしたとし、購買者が立ち去った後、私は終日外出で連絡不可能になり、次の日もそうであると言わせるようにしています。
もし、プロスペクトが私に会いに来ることが可能な状況であれば、クロージング後4時間以内は、彼のことを油断なく警戒するようにしています。その4時間が最も心変わりが起きやすい時間帯だからです。
もし、彼がキャンセルするつもりのメッセージを受付嬢に残そうとしたなら、「詳しいことが分からない者がメッセージを受け取るとトラブルのもとだから、注文についてのメッセージは受け取ることを許されていない。」と上司から言われていると、丁寧に答えさせていました。
<ノーメッセージ>
プロスペクトが、担当営業マン以外の人にたいして、もっと図太く頑固な場合、何としてもメッセージを残そうとします。そんな時は、直接私のところに彼がやってこない限り、メッセージを受け取らないようにします。「ジョーンズさん、ここはたいへんバタバタしておりまして、受付の人は、気を利かせることができないですよ。」
その目的は、彼に自分の決めたことに対して、出来るだけ長い間、気を揉ませ、彼に良心を働かせてもらうことです。ある購買者は、やっと会えた私から、メッセージを受け取っていないことを聞いた時には、キャンセルのキの字も口にしませんでした。彼は、メッセージの中身をガラリと変えました。結局のところ、彼の良心が契約を守ることを決めさせたのです。
覚えておいてください。キャンセルの試みがあった時、たよりになる味方は時間です。彼が買うのをやめたと言うまでの時間を、引き延ばせば引き延ばすほど、彼がそのことを口にしなくなる可能性が高まるのです。
<マイクから一言>
現代の日本では、プロスペクトが注文した直後にあなたに連絡を取れないようにしたり、メッセージを受けらないようにすることが難しいだけでなく、クーリングオフの全期間中、逃げ回ると、後から会社が訴えられる危険もあります。また、電子メールを使って簡単にメッセージを残すことができます。見ていないといっても通用しません。
しかしながら、キャンセルの危機が迫っているとき、時間が頼りになる味方であるという事実は変わりません。クロージング直後は、出来るだけそのプロスペクトからの電話は取らないでおきましょう。彼は、メールしてくるかもしれません。それでも、返事をすぐにしないようにして、時間を引き延ばすことはできます。少しの間、わざとプロスペクトに気をもんでもらいましょう。
<何かお困りですか?>
顧客によるキャンセルを回避するもう一つの方法は、単に説得することですが、権限を持ったものの応援をもらいます。そもそもクロージングするために、あなたは商品を買ってもらうように説得したのです。キャンセルの試みに対しても、説得することで対抗します。ただし、権限を持つ人とダブルチームを組むことで、プラスの圧力をかけます。
もともとクロージングの時にダブルチームを組んでいなかった場合のみ、この手法を使います。そうでなければ、プロスペクトは、最初から権限者が来ることを予知し、その効力が失われてしまいます。ダブルチームで攻められる前に、防御線を張ってしまうからです。
思い出してください。彼は良心のうずきを感じています。彼は一刻も早く、キャンセルを終わらせたいのです。できるだけ目立たないようにして。
彼は、あなたの上司などの上層部の人、あなたより権限のある誰かに直面するとは思っていません。彼は、あなたなら言うことを聞かせることができると思っています。しかし、上司のスティーブン氏を連れてきて紹介すると、あなた1人ではなく、会社自体がこのキャンセルをただで済まさないために、動き出したと感じるのです。
この場合、注文をクロージングした時よりも、いっそう入念に計画したダブルチームが必要です。パートナーは、それまでの経緯について詳細に説明を受け、なおかつ、プロスペクトの人格についての洞察力に富んでいなければなりません。客に契約を守る決意をさせるための、ベストな客の扱い方、説得のしかたを知っている人が必要です。
いろいろなアプローチがありますが、スキルの高いダブルチームは、キャンセルしようとしているプロスペクトに対して、無口で打ち解けない態度で臨みます。話しかけるまで間を置きながら、温かくてフレンドリーな会話は外に置いておきます。
彼は礼儀正しくしますが、冷ややかな感じです。10分から15分ほどの間、プロスペクトの良心をうずかせるとことが、彼の態度を軟化させるのに役立ちます。パートナーの冷ややかさは、キャンセルを優しく受け入れてくれそうにないことを示します。
パートナーは、あなたの説明によって、知っておかなければならないことは知っています。よくあることですが、彼はプロスペクトのことやキャンセルを希望する理由について、何も知らないふりをします。そうしてすることで、購買者にキャンセルの理由をもう一度説明させて、不当なキャンセルに対する彼自身の心地の悪さを更に味わってもらうことができます。
相手に、キャンセルの理由について、言いたいことを言わせた後、彼はおもむろに戦い始めます。(冷静で冷ややかに)会社の代表者が決めた契約、誠意に基づいた契約を失敗に終わらせないぞという想いを態度で示します。
<標準的なダブルチーム>
私が過去に勤めていた、ある営業代理店は、キャンセルに対応するための標準化されたダブルチームでのプロセスを使っていました。売り込みの時のダブルチームと同様、そのうち1人は、プロスペクトに対して、営業担当者より権限がある人という印象を与えます。そして、ゆっくりと順序立てて、それまでのやり取りについて、1つ1つ、再確認してゆきます。その間、プロスペクトの良心がうずくのです。
「ジョーンズさん、ライリーと申します。私どものデインから聞きましたが、今日の午後、彼とお宅様との間で締結した契約について何か問題が出て来たと聞いておりますが。」(契約を締結したことを巧妙にほのめかします)
「ライリーさん、実は帰ってから支払いについて、考えなければならなかったんですよ。」(クローザーの表情は、厳格ですが、眉間にしわを寄せたりはしません。ジョーンズ氏の言い分が聞こえていることも認めません。)
「帰宅してから、契約書を読み返しましたら、支払い条件で気にかかることが出てきたので...」
ここで、クローザーは彼の権威を示します。
「レス、何度言ったらわかる。お客様から署名と捺印を頂く前に、詳細を1つ1つ確認するように言っているだろう。それがルールなのに、なぜ、そうしなかったんだ。」
「1つ1つ確認したのですが...」
「わかった。では、ジョーンズさん、ご自分が署名した内容に関しては、理解されておられたのですね。私は、購買者(購買者!)をだましたり、契約内容を理解させないまま署名、捺印させるような人間は、解雇するつもりです。絶対に許さないつもりです。(彼が、署名、捺印した契約の中身を「理解していた」という点や、その他、彼が誠意に基づいて契約し、そのことが何を意味するのかも分かっていたことを、微妙にほのめかします。)
「レス、お前はジョーンズさんの予算を計算に入れたのか。支払いの負担がかかりすぎないか確認したのか。いずれにしても、もう一度見てみよう。お客様が、せっかくちゃんと契約(契約!)したものを何とかできるように。ジョーンズさん、あなたの月収はいかほどですか。」
ダブルチームのベテランが使ったこの方法で、気の毒なジョーンズ氏は、今にも契約内容の遂行を決心しそうになっています。彼が商取引を交わしたことを、何度も何度も、巧妙に再認識させられたからです。
続いて、パートナーが最初にクロージングした時と同じプロセスをもう一度繰り返します。これら2つのアクションが効力の発揮させることで、プロスペクトが2度とキャンセルを口にしないように丸め込みます。
<最後の日>
説得を使ったもう一つの効果的なキャンセル撤回の手法は、「これが最後の日」作戦です。
この方法は、その時の状況によって、ダブルチームでもできるし、営業マン1人でも使うことができます。
簡単に言うと、営業マンはプロスペクトの同情心に働きかけます。そして、彼のために、何とか契約を守ってもらえないか説得するのです。
彼はその日が、営業成績コンテストの最終日で、もし、この注文が決まったら、ラスベガス旅行の賞がもらえる、ただし、今日中に受注しなければ、その賞がジョー・ギボンに取られてしまうことを話します。現在、営業成績は同点で、後15分でコンテストが終わってしまうと言います。(時計を見ながら)
私が指導していた営業マンとダブルチームを組んで対処した、ある人の事が思い出されます。新人の営業マンが、キャンセル対応の助けが欲しいと言ってきました。その客が彼に言うには、船の装備品を買うのを、市場価格が下がる冬まで待ちたいとのことでした。
トミーがプロスペクトを紹介し、オフィスでの面談が始まりました。巧妙に「あなたは契約したのでそれを守るべきである」ということを再認識させましたが、通じませんでした。彼は、今は買わないのだと固く決断しており、そこからテコでも動きませんでした。後から分かったことですが、彼の友人が、値段が安くなるオフシーズンまで待てば、良い買い物ができるように手伝うと言っていました。
それから切り札を出しました。「トミー、残念だったね。君はベストを尽くした。入社してから、ずっと戦ってきた初めての営業成績のコンテストでの優勝を逃してしまったね。でも、次がある。とにかく君は頑張ったよ。」
トミーは、それを受けて言いました。「いいえ、私が残念なのはコンテストの事ではありません。ジョーンズさんが、二度とないこの条件を逃してしまうことです。オフシーズンになって、いつになっても、同じ条件が出せることはありませんから。もちろん、ラスベガス旅行が取れれば、うれしかったですよ。妻も喜んでいましたし。」
「えっ、どんな旅行なの。コンテストって何のことだい。私がサインした契約があれば勝てたのか。」
これで彼をゲットしました。彼が、自分がサインした契約のことを口にしたとき、私には、彼の良心が働いて、友人の言うことをきいて、一度結んだ売買契約を破棄することに、罪悪感を覚えていることが分かりました。良心のある人間にとっては、やりたくないことです。
そして、彼の理不尽さのせいで、トミーが最初のコンテストの優勝を逃がしてしまうという、もう1つの事実が、彼を突き動かしたのです。たとえ、船を浮かべる湖の水が干上がっても、同じことをしていたことでしょう。それに、今しかない良い条件を押さえることができたことも、悪いことではありませんでした。
「左様でございます。コンテストのルールで、購買者が契約書に証明した瞬間に受注としてカウントされるのです。一度契約が、誠意をもって締結されると、それが破棄されることは、ほとんどないとの判断です。」(巧妙に再認識させています)
彼は、装備品を受け取ってくれました。その時に、いくつかのオマケも付けました。安全用のクッションとナイロン製のロープでしたが、5ドルほどで済みましたので、賢い出費でした。
<圧力をかける>
キャンセルを阻止するもう一つの方法があります。しかし、それには権限を持った人の関与が必要です。なぜなら、それは最後の手段であり、場合によっては反撃を受けることもあるからです。それは「圧力をかける」手法です。文字通り、プロスペクトに契約を守らせるべく圧力をかけます。
顧客が、一度契約内容を受け入れ、すべての契約書類に署名、捺印している場合、事実上どの点から見ても、彼はその品物を買ったのです。納品を受けている場合は、特にそうです。
契約を守ってもらうために使ったすべての友好的方法が失敗に終わった場合、その担当者、あるいは、権限を持った人は、どうするか判断しなければなりません。
プロスペクトの希望を受け入れるという選択肢もあります。書類をすべて破り捨て、注文を取るために費やされた時間、コスト、労力をすべて犠牲にするのです。あるいは、厳しく対処し、彼に圧力をかけることもできます。その契約金額の大きさ次第で、相手に契約の行使させるために、民事訴訟を起こすことさえあり得ます。しかしながら、二つの理由から、それは会社によるアクションである必要があります。一つには、訴訟をちらつかせた脅しだけでは、プロスペクトが製品やサービスを受け取らないかもしれないこと、もう1つには、そこまでやるかどうかは、会社が決めることだからです。
それに、強制によって顧客に取引させると、不満足な購買者が生まれるので、実際は圧力をかけ、無理強いして契約を守らせることの価値がなくなるのです。
どんな場合でも、この問題は、あなたではなく、すべてマネージメント(経営層)に任せることであることは、いくら強調してもしきれません。これは、営業マンが何の努力もせずにプロスペクトを逃がしてよいという意味でもないし、対処を依頼するためにマネージメントのところにつれて行かなくても良いという意味でもありません。しかし、「圧力」と使うかどうかは、会社のオーナーあるいは、マネージメントが決めることなのです。
<用意しなさい>
キャンセルを警戒しなさい。それが間近にせまっている兆候は、クロージング中に現れます。
その兆候が見えたなら、対処する用意をしなさい。その根を断つために、二つのキャンセルの予防措置を取りなさい。もし、それらに効き目がなければ、その注文が売上げのクローズファイルの中にキープ残り方法のうちの1つを使いなさい。
忘れないでください、キャンセルの試みに対して使える二つの基本的な予防措置がありましたね。最初は、すべてのペーパーワークを完結すること、2つ目は、出来るだけ早く納品するということです。
この2つに効力がなく、キャンセルされそうになったら、この章で教えた他の手法をあなたなりにアレンジして戦いなさい。
あなたが、どんなやり方でそれらを使おうが、最もパワフルな武器は、プロスペクト自身の良心です。彼の良心を利用すれば、クローズがクローズのまま保持できるのです。その用意が不十分であったり、よく練られたキャンセル回避策がなければ、契約書を破って捨てることだけに、あまりにも多くの時間を費やすことになるのです。
<マイクから一言>
ここではキャンセル回避の方法が述べられていますが、あなたが、もし、プロスペクトから1章の<マイクから一言>で説明されているような、親近感と信頼感を勝ち得ていれば、キャンセルは起こりにくいのです。それでも、競合相手から高性能で安価な新製品による不意打ちをくらったときは、例え納品後であっても、キャンセルの危険はあります。それに対して、営業マンは何ができるのでしょう。この章で説明されているキャンセル回避のテクニックを使うのですが、大事なことは、クロージングまでのプロスペクトとのコミュニケーションの中で、「この人は、自分のために良い条件(価格、納期、仕様、構成)を出そうと、誠心誠意努力してくれているのだ」という印象を与えておくということです。恩に着せているというイメージを与えてはなりませんが、プロスペクトのために良い条件を出すために必死で努力したことを、全く気付かれていないというのは、プロの営業マンにとって、美徳でも何でもありません。それでは、能力不足なのです。人間関係も良好で、頑張ってくれたと思われていうこと、説得、良心の訴え(相手の罪悪感)を利用したキャンセル回避のテクニックがより効果的になるのです。
会社によっては、クロージング後の顧客対応を営業部からサービス部など別のセクションに引き継ぐ仕組みを持っています。それは、1つの案件のクロージングが終わった後、営業マンが直ぐに効率よく新しい案件に取りかかるための仕組みです。その時、注意しなければならないことは、契約を締結した後、営業マンの態度や対応の質が変わっていないかを、顧客は想像以上に見ているという点です。会社の組織がどうであれ、顧客にそういうイメージを持たれて損をするのは、あなたなのです。それまでに築き上げた親近感と信頼感がガタ落ちにならないように、契約締結、納品後も誠心誠意尽くしてくれるというイメージを保ちながら、サービス部にうまく引き継いでください。それができないと同じ顧客への次の案件のクロージングに不利になるだけでなく、キャンセルの危険が増すのです。
最後にペーパーワークについての注意点ですが、皮肉なことに、契約金額が大きい商品であればあるほど、注文書や契約書に署名、捺印をもらっていない状態での先行手配が多いような気がします。早く勝利宣言したいのはわかりますし、顧客の都合を考えてやっている場合もあるでしょう。しかし、署名、捺印済の書類が揃っていない状態で走ってしまうと、キャンセルを被るリスクは10倍になると考えてください。契約金額が億単位どころか10億単位の見積り案件でも、99%受注と称して、ペーパーワークを終わらせない状態で手配をかけるケースが多々あります。業界の慣習だと言われて、新しく赴任した社長でさえも黙認する場合があります。そのような状況で、キャンセルのリスクから会社や経営者を守るのは、あなたなのです。契約書に署名と捺印が取れてなければ、それは受注ではなく、プロスペクトの心の片隅に「最悪、まだ、逃げることができる」という気持ちが残ってしまうということを忘れないでください。この教材で教えたコミュニケーションスキルを駆使して、一刻も早く、すべての書類にサインさせなさせなさい。

