クロージングのための正しい態度
もちろん、意見を言うこと、正しい意見を言うことがクロージングを助けるこることもあります。以前、数人の営業マンと生命保険の会社でベストなのは相互会社か株式会社のどちらかについて議論したことがあります。ティムは、保険契約者が会社を所有する形態の相互会社がベストだという意見を持っており、そのことについて強い確信を持っていました。しかし、彼は、どんな時にスイッチを入れ替えなければならないのかを知っていました。有能な営業マンの証です。
「ジョーンズさん、あなたは個人代理店として保険商品を販売されていますが、相互会社と株式会社、どちらが良いとお考えですか。保険契約者の立場に立った場合ですが。」ティムは、その議論の途中に入って来た、プロスペクトに聞きました。
「歴然としているね。保険料が安く、保険金額が大きい株式会社の方が断然いいね。どんな時代でも。」
「それ見ろ。俺が言っていた通りじゃないか。ジョーンズさんは、保険のプロだぞ。」
「でもお前、たった今...」仲間の営業マンのうちの一人が口を出しましたが、ティムはすぐにプロスペクトを彼の事務所に急いで連れて行きました。
ジョーンズ氏が帰った後、まだ、保険会社の議論をしている我々のところに、ティムが戻ってきました。
「ティム、正直になれよ。」同じ営業マンが言いました。彼は新人でした。「君は30分もかけて、相互会社の良さを説いていたじゃないか。なのに、プロスペクトが、株式会社が良いって言ったら、賛成しただろ。自分の意見を通さないなら、最初から何も言わないほう良いんじゃないか。」
ティムは、突然ダンスステップを踏み始めて、後ろのポケットから財布と取りだしました。彼は20ドル札の束を振り動かして、事務所に納金しました。それは手付金だったのです。
「これが考えを変えた理由さ。とにかく、ジョーンズさんのためにそうしたんだよ。それとも、彼に反対しろとでも言うのか。彼は、私とオフィスに入った時には、言いなりになってくれたよ。彼をその道の権威として立てたからだ。それが決定打だった。後は、彼の意見に同意したわけだ。営業のテクニックだよ。」
このケースでは、ティムが言った意見がクロージングの助けになりました。彼は、ジョーンさんの意見に全く賛成ではありませんでした。しかし、賢明な彼はジョーンズ氏の意見を第一に考え、そして、彼に同意しました。
しかし、ほとんどどんな場合、自分の意見は自分の中に留めておくことがベストです。あなたの意見を言う時、逆噴射となり、注文を失うことにもなりかねません。特に、クロージングをかけている時は、そうなのです。
<マイクから一言>
1-6の<マイクから一言>をもう一度、読んでください。人間通しが理解しあうためには、コミュニケーション、親近感、リアリティーのシェアの3つが揃う必要があると述べました。
上記のティムは、プロスペクトのリアリティーを把握するやいなや、それをシェアするために合意の合図を送りました。そうすることで、親近感が高まり、プロスペクトと同化することに成功しました。もし、自分の意見を通していたなら、リアリティーのシェアの部分で破綻し、その結果、親近感とコミュニケーションの部分も崩れ落ちていたに違いありません。かといって、プロスペクトが何を言っても必ず同意しなければないのでしょうか。時には、その考え方を改めてもらわなければなりません。特に、競合している商品を実態以上に高評価しているような場合です。その場合、まずは、プロスペクトがそう考えていることについては理解したことを伝えましょう。「なるほど、そう思ってらっしゃるのですね。よくわかりました。」とか「そうお考えになるのは、もっともだと思います。」のような言葉で、客が持っているリアリティーは理解したということを伝えるところからスタートしてください。例えプロスペクトが、競合製品のことを褒めたとしても、必ずそうしてください。そうしても、競合製品が自分の商品より優れていることを認めていることにはなりません。プロスペクトがそう考えていることについて理解を示しただけです。そうした後に、自分の商品にも、良いところがあるのだということを、相手を否定しないように伝えていきましょう。その過程で、相手が持っているリアリティーを徐々に、こちらに有利になるように、変化を与えていきましょう。決して、ガツンと否定してはなりません。たとえ、敵の営業マンが真っ赤な嘘をついていても、プロスペクトに対して、「それは、違います。」「それは嘘ですよ。」などと言ってはなりません。
<彼と結婚するな>
あるセールスマネージャーが、次のような話をしてくれました。
昔々、二人の男が同じ女性に求婚していました。その女性は、どちらを選ぶべきか悩んでいました。二人ともハンサムで、お金持ち、そして真面目でした。なので、競争させることにしました。
彼女は、それぞれに1時間与えるので、その間に自分と結婚するように説得して欲しい、そうすれば、1時間後にどちらかに決めると言いました。
1人目の求婚者は、彼のライバルの女性スキャンダル、荒々しさ、そして浪費癖について、彼女に4時間かけて話しました。自分自身のことや、彼女への愛についての話はありませんでした。
二人目の求婚者は、それまで他の女性たちと付きあってきたことを告白し、彼女ほど美しく魅力的な人はいなかったこと、彼には浪費癖があり、もし結婚したら彼女に惜しまず与えるための散財は、今までより、はるかに大きくなるであろうことを話しました。そして自分の欠点や罪の告白の後、彼女の手を取って、「自分を善良な人間で、良き夫にしてくれるのは、あなたしかいない。」と言いました。
彼女はどちらと結婚したのでしょうか。2人目の男は、彼女がそれまで見た中で最高の女性であり、彼女を幸せにするためにお金も使い、努力もする、そして、自分をまっとうな人間にしてくれるのは彼女だけだということ伝えました。それが、彼女の聞きたい事のすべてでした。
この話が教えていることは、はっきりしています。あなたは、商品を売る仕事をしています。競合相手をこき下ろすために生きているのではありません。競合会社の製品やサービスの欠点を強調し続けると、2つの結果をもたらします。2つとも有害です。1つは、相手の商品に注意を向けてしまうこと、もう一つは、あなたの商品の利点について何も言っていないということです。
敵の悪評を立てることのもう一つの有害な結果は、「跳ね返り」があるかもしれないということです。人という生き物には、踏みつけられている人の味方をしたり、迫害されているものを守ろうとする性質があります。そこにおらず、自分を守るすべのない競合相手やその製品を罵倒すると、そうなってしまいます。そうなれば、プロスペクトが、自分自身の目で競合相手やその製品を見てみようと駆り立てられることは、大いにあり得ます。つまり、あなたは、せいぜい自分自身を製品とともにプロスペクトから遠ざけるだけで終わるのです。
次の営業会議の中で、架空のセールストークを出席者に聞いてもらい、その良し悪しを評価してもらう実践練習をしてください。良かった点、悪かった点、競合相手を処理するベストな方法について話し合ってください。
<競合相手を攻撃するクロージング>
「ジョーンズさん、この取引の締結にご賛同いただけるのでしたら、ここに署名と捺印いただければ、当方としては...」
「その前に、先週パーキンスの店が広告していた新型のトラクターを見てみようと思うんだ。性能もよさそうだし…」
「ジョーンズさん、話の腰を折るわけではありませんが、それは間違っていますよ。(間違い!)確かに、特別値引きの広告をしていましたね。あのくせ者は、値下げでしが物を売れない奴です。最近、うちに来た人たちの話を一度聞いてみてください。パーキンスが人を騙しながら売り歩いた二流品は、すぐ故障して、あいつはそれを見ようともしない。サポートする人間はほとんどいないのです。まったく、ひどい話ですよ。」
「二流品?ブランソンの製品は、一流だと思っていたが、驚いたよ。パーキンスがくせ者ってことにもね。」
この言葉で、その営業マンは、もっと熱くなりました。
「お客さん、もし、今ここを出てパーキンスのところに行けば、それは一生の不覚になりますよ。(彼にそうしてみろと挑んでます。)我々がお助けしようにも、手遅れになってしまいます。パーキンスとあそこの従業員ときたら...」彼は、プロスペクトがもう聞きたくないと思うまで、延々と話し続けます。
「さて、彼が本当の大泥棒ならば、私を騙せるかどうか、ちょっと行って見てくるよ。そんな経験は、ほとんどしたことが無いからね。買いたい値段で買って、約束を守らせるよ。それではまた。」
「あっ、ジョーンズさん...ジョーンズさん」、プロスペクトはパーキンスの店に行ってしまいました。後は、パーキンスが、相手がどんな悪口を言っていたかを聞いて、ジョーンズ氏にトラクターを渡せば、それで勝負ありです。その営業マンに他ならぬ教訓を与えました。
この逸話は、どう響きましたか。
<合意しないあなたに合意します>
「ジョーンズさん、あなたのトラクターの準備が出来ましたよ。こちらの書類に署名をお願いしますね。」
「ああ、でも決める前にちょっとパーキンスの店に行って見たいんだ。あそこは、今週トラクターのセールをやっているんだ。なので、ちょっと...」
「ジョーンズさん、ブランソン社の製品はすごくいいものですよ。信頼性の高いものを作っています。パーキンス氏も信頼できる男だし、責任感のあるビジネスマンです。しかし、我々のパワーマスターのようなラインは無いですよ。全国のすべての業界誌で、ナンバーワンの評価を得ています。確かに彼、今週セールしていますが、我々が提供しているような、現場での補修、点検のサービスはやっていません。」
「パーキンス氏と彼の商品のことを悪く言うつもりはありません。しかし、彼らが現場に出かけて、補修サービスをやっているのを見かけたことはありますか。ジョーンズさん、収穫の時期が来たときは、トラクターが必要となります。もし、一台でも修理が必要になったら、待っている時間はありません。我々だったら、電話一本でお助けにあがります。さて、署名していただくのは、この書類です。どうぞここに...」
「全業界紙でナンバーワンか。ランキングがあるなんてしらなかったなあ。パワーマスターがトップだってことも。それを聞いて良かった。仕事には、最高のものを使いたいからね。保守契約も良いね。ペンを貸してくれ。完了させよう。」
<相手をけなさず、自分を売る>
後者の営業マンが、売ることができた理由は2つあります。彼は、競合相手の製品や店の批判はしませんでした。
彼は、事実に基づいた、理にかなった主張で、自分の製品を売ることに時間を費やしました。 話の流れで、ブランソン製のトラクターは良品であり、代理店は信用できることを認めました。(巧妙に、ジョーンズ氏に彼の判断が正しかったということ伝えました。)
しかし、相手の良さを容認すると同時に、自社の製品や代理店サービスの良い点にも触れました。ブランソンのトラクターは良品である。一方、こちらの製品は業界ナンバーワンであること。パーキンス氏は正直者である。一方、こちらの代理店には無料メンテナンスのサービスがある点についてです。
これは前述の2人の男が、同じ女性に求婚する話と似ています。1人は、相手の悪口を言いながら自分を売り込みました。その女性は、もう一人の男性を選びました。その男性は、彼女を幸せにしたいという気持ちを売り込み、彼にとって彼女は唯一の女性であると主張しました。それが、彼女が求めていたことだったのです。
彼女は、1人の男がもう1人の男のことをどのようにこき下ろすかについて、興味がありませんでした。それよりも、それぞれの男が、将来、夫になった時、何を与えてくれるかに興味があったのです。
トラクターの注文を取った営業マンも同じことをしました。彼の競合相手を貶めることに集中せず、彼は自分の製品と代理店サービスを売り込み、そのプロセスが公正だったのです。
<マイクから一言>
例えば、あなたが自動車の営業マンで、見込み客との会話の中で彼が他社製の車のファンで、若いころからその会社の車に乗っていることが分かりました。ちょうど、狙っている女の子に彼氏がいることが分かった時と同じような感じです。その時、あなたが最初にしなければならないことは、「あれは、良い車ですね。」というように、褒めるということです。まあ、最初からその人が乗っている車をおとしめるような野暮な営業マンは滅多にいないでしょうが、「そうですか。」とだけ言うのもだめです。大事なのは、まず、あなた自身の印象を良くするということです。できれば、褒めてから、彼が乗っている車の良さを語ってもらってください。彼が語るのを促してください。そこで、あなたが使うのは、基礎的なコミュニケーションテクニックです。(1章の<マイクから一言>を参照のこと)そして、あわよくば彼の口から自分の車についての、ちょっとした不満が出てくれば、最高です。傾聴の技術を使って、どんどん促して、聞いてあげてください。その愚痴への答えとして、自社製品のPRを始めるのも1つの手ですが、出来れば彼の愚痴をできるだけいろいろな角度から聞いてください。何が、いつ、どんなふうに(WHAT, WHEN, HOW)などの疑問詞を使うのもいいでしょう。最後のステップが、自社製品のPRですが、その時、プロスペクトの愚痴が、今乗っている車の電気系統の弱さだとしたら、「うちの車の電気系統は素晴らしいですよ。」のように、即座に直接的に、その部分を攻めるのも良いですが、出来ればそれ以外のPRポイントから攻めましょう。まわりから、攻めて行きましょう。本当に効き目がありそうなPRポイントは、プロスペクトの帰り際に、何気なく、思い出したように伝えるのも効果的です。「あっ、そうだ。お帰りになる前に、実際に運転席に座ってみてください。」「カタログのこのページを見ていただけますか。」とか言いながら、最新のカーナビやコントロールシステムなどの電気系統の良さを見せ、体験させるのです。プロスペクトが、家に帰ってからカタログを読み直してくれれば、しめたものです。
<ボスでもないのに、ボスのふりをしないこと>
規模の大小にかかわらず、どんな業態であっても、会社には営業マンが守るべきルールがあります。それらのルールは権限のライン、言い換えれば、指揮系統があり、しかるべきポストに権限の分与がされています。
もし営業マン、窓口の職員、事務方の職員が、会社の方針や手順に関して、それぞれ好きなように判断したら、混乱を招くに違いありません。いろいろな状況を処理するためのベストな方法が何かについて、人はそれぞれ違った考えを持ちます。そうなれば、方針や手続き上のルールが無いのと同じになってしまいます。
賢明な営業マンは、彼自身のため、彼の会社のために会社の方針や指揮系統を学びます。そして、その指揮系統を無視し、方針を変更することは、絶対にしません。
会社の方針に従う第一の理由は、守ることのできない約束や、あなたがするべきでない判断をしてしまうことを避けるためです。
もし、会社の方針を変え、勝手な解釈をすると、通常何が起きるでしょうか。
<権限があるふりをして、注文を失う>
ネイサンは優秀な保険営業マンでした。彼にはプロフットボールチームで活躍する友人がいました。その友人がクリスマス休暇に、2日間の訪問をしてきた時、ネイサンは高額の生命保険商品を紹介しました。
フットボールをやっていることに関しての制約はありませんでしたが、申請者の年齢や体調にかかわらず、身体検査を受けることを、彼の会社は義務づけていました。ネイサンはその会社で長年勤めており、もっと賢明な判断ができたはずだったのですが、その友人がその日のうちに家に帰ることになったので、検査を受けさせる代わりに、フットボールのチームドクターからのレターを受け入れてしまいました。
その日、彼は車で帰途についていましたが、車がハイウェイのセンターラインの超えた瞬間、大型トレーラーと正面衝突したのです。彼は即死し、保険会社は災害倍額支払いを適用し、10万ドル(現在の価値で約100万ドル)の支払いをすることになりました。理由は、当時の法律では医師の診断書を受け入れると、会社が申請を受けるか受けないか決める前に、保険契約が有効になっていたからです。
続いて行われた調査で、彼には慢性的な二重視という問題があったことがわかりました。彼は、ラインマンだったので視力は重要ではなく、プレーに差しさわりはなかったのです。しかし、このことが恐らく事故の原因であったと言われていました。
<結末>
ネイサンは54歳で仕事を失い、次の職も見つかりませんでした。最後に彼のことを聞いた時には、保険会社で申請書の中身をチェックする、パートの仕事をやっていました。
ネイサンは、会社の方針では許されない形で受注するという罪を犯しました。長年、彼が知っていたやり方ではなく、こういう解釈をしてもいいはずだというやり方を使ってしまいました。それだけでなく、権限を持っている人に判断を委ねなかったのです。彼らが、ネイサンと同じ判断をしていても不思議ではなく、彼は重大事から身を守ることができたはずだったのです。
<上司は、いつでも上司>
営業活動では、どんな場合も指揮系統に従いなさい。あなたを監督する人は、理由があって監督しています。特別な才能と経験、経験年数などです。たとえ、その人が無能に見えたとしても、古いことわざを思い出してください。「彼は、いつも正しいとは限らない。しかし、ボスであることに変わりはない。」
ネイサンの間違いは破壊的でした。クロージングのプロセスの中で引き起こし、彼は会社に販売金額を上回る被害を与えました。権限者を無視し、会社の方針に従わず、勝手に変更して、責任をしょいこむことになりました。
もし、方針やルールにかかわることが出てきたら、冒険をしてはなりません。クロージングの時は、売れるか売れないかの境目なので特にそうです。上層部にルールの解釈をさせなさい。そうすれば、プロスペクトに言うべきでないことを言って、注文を失うこともなく、あなたの上司を常に満足させておくことができます。
<強引な売り込みのつけ>
多くの営業マンは、簡単に売れてしまうケースに出くわしたときに、深刻な間違いを犯します。彼らは、何でもすぐに真に受けて、扱いやすいプロスペクトに強引な売り込みをしてしまいます。
このやり方は、プロスペクトに対して不公正であるだけでなく、彼自身と会社に対して破壊的な悪影響を及ぼすことになります。彼には、まっとうで倫理的な営業マンとして、顧客に合った製品やサービスを提供する義務があります。彼自身に深刻な結果をもたらしてしまうような強引なセールスをしてはいけません。それには、重要な理由があります。後から自分自身や会社に跳ね返りがあると知りながら売るような行為は営業ではありません。欲だけに駆られた注文取りは、セールスとは言えません。うさんくさく、意味のあることないことを取り混ぜて人を煙に巻くやり方もそうです。上記はすべて販売ではなく問題なのです。
<右足に左足のくつをはかせる>
ある日ディックは、ドアからショールームに入って来た1人の年配の女性に対応しました。彼女はオートマチックの4ドアセダンを見に来ていました。営業マンの中の1人は、彼女のことをよく知っており、彼女が賃貸の斡旋だけではなく、マンションや戸建てなど多くの不動産を所有する資産家の未亡人であることをディックに教えました。
しかし、問題が一つありました。4ドアのオートマチック車が在庫になかったのです。彼らが持っていたのは、大型のV8エンジンの4段式ミッションの車だけでした。それは誤って手配された売れ残りで、その受注に対してマネージャーは営業マンへ多額のインセンティブを約束しなければなりませんでした。
ディックは、彼女にその車を見せながら、朝鮮戦争が起きているせいで、すべてのオートマチック車は、陸軍に供出されていると説明しました。
そして彼は、その女性が昔、4段トランスミッションの車の操作方法を習っていたことを指摘して、運転すれば思い出すはずであり、オートマチックより、むしろ扱いやすく、値段も300ドルほど安いと訴えました。
彼のもちまえのセールストークの流暢さと、説得力で、彼女はその4段ミッション車を買うことになりました。他の営業マンは彼の売り込みに反対していました。実は、オートマチック車が搬送中で、2-3週間待てば搬入される予定だったからです。ディックは、彼女は買う気になっており、お金も持っている、インセンティブを確定するための売上の締め日も迫っていると言って、聞きませんでした。
その女性は何とか(やっとのことで)、代理店の敷地を出て、ギアをガチガチ言わせながら運転して出て行きました。ディックは意外な授かりものに酔いしれていましたが、2週間後、弁護士から電話がありました。
<もう一つの事例>
その弁護士が、店のセールスマネージャーに対して言うには、彼のクライアント(車を買った女性)は理解能力を持っており、彼女自身がその車を買うことを受け入れたので、そのこと自体は訴訟の対象にはならないということでした。
彼が電話した理由は、彼が地元紙に掲載しようとしている有料広告を読み上げるためでした。それは、次のような内容でした。それは、例の車の注文内容と条件および、関連するすべての事実。代理店と営業マン本人に対する批判はありませんでした。その営業マンが、すべてのオートマチック車が陸軍に供出されると言ったこと、買った車のエンジンは
350馬力までパワーアップされていたこと、クライアント(その女性)の年齢などの事実について、たんたんと言及していました。
そのことが新聞紙上で公表されてしまうことを、会社が黙って見過ごすことはできません。経営者の良心が疑われます。彼は、ディックを呼び出し、書かれていることが事実かどうか確かめた後、彼を解雇しました。
彼は弁護士に電話をして、車を引き取ることと、その女性が欲しがっていた車を納車することを伝えました。もし、それが無理なら、全額返金したいとも言いました。また、満足な結果だとの示談書を書いてもらうために、迷惑料も含めて500ドル支払いました。
彼女は、その迷惑料は受け取りませんでした。ただ、お金を返してもらえればいいので、それ以上その件で煩わされたくないとのことでした。
車は2つのフェンダーが壊れた状態でもどってきました。ブレーキペダルが重すぎて、ちゃんと踏めなかったとの話でした。その上、走行距離計は1000マイルを超えていました。彼女の孫が運転していたとのことでした。
代理店は、戦うかどうかを天秤にかけた末に返金し、損傷した車を引き取り、思っていたよりいい値段で売りました。
ディックは注文を取りました。最もうまくいったクロージングでした。しかし、彼は何を得たのでしょう。仕事もインセンティブも失い、まともな代理店はどこも彼を雇用しませんでした。
営業マンが陥るかもしれない、同様に危険な、もう一つの落とし穴があります。
ファイナンスがらみの契約や保険のように月々の支払が発生する商品を売る際には、客に月払いを押し売りしてはなりません。一時的にあなたのポケットにお金が入るでしょうが、いずれ強引セールスマンのレッテルを貼られ、未回収やキャンセルを引き起こすなど、遅かれ早かれトラブルに陥るのです。
<タブーのまとめ>
効果的、永続的、トラブル無しのクロージングのために、次の「べからずリスト(やってはならないこと)を覚えておいてください
あなたのプロスペクトの間違いを指摘してはなりません
彼に余計な見解を述べたり、批判をしてはなりません
競合相手の悪口を言ってはなりません
権限者を装ってはなりません 指揮系統を壊さないこと
あなたの製品や月払いのファイナンス商品の押し売りをしてはなりません
そして、最も大事なのは、「今回だけは大丈夫」、「このケースに、このタブーはあてはまらない」などと考えて、5つのタブーのどれかに屈しないことです。
それを破ることは、公正でまっとうになり切れない習慣をもった営業マン、優秀なクローザーであることの終焉の始まりなのです。
目先のことしか見えていない人、今日中にクロージングすることしか考えていない人は、上記の教訓(いや、貴重な必須事項)を無視し、浮かれた営業を続けます。
そして、ある日彼は、あたりを見回して、ひいき筋も、彼を頼る人もいなくなって、孤独に立っている自分を発見するのです。最悪なことは、会社から彼への信頼が崩れてしまうということです。

