確実に注文を失う道筋
スムーズで永続するクロージングを確実にするために、営業マンがやらなければならない事があるように、してはならないこともあります。せっかく取った注文を確実に失い、それまでの努力を水の泡にしてしまうような、営業マンが起こす間違いがあります。
営業マンは、プロスペクトの反論に対して、反対意見を言いたくなります。プロスペクトが競合品も検討したいと言ったときに、パニックで対抗手段を出してしまうことがあります。会話を個人的なレベルにしてしまうこともあります。これらはすべて、失敗に繋がります。クロージングの成功率を高く保つには、避けなければなりません。
落とし穴が気づけるようになるトレーニングとして、セールストークを1つの長くて、曲りくねった道だと考えてください。あなたとプロスペクトはスタート地点に立っています。多くの回り道ややカーブの向こうのはるか遠くにクロージングというゴールがあります。
セールスアプローチが伸展することを意識しながら、プロスペクトと同じ道を歩いて行く自分を想像してください。カーブが見えればスピードを落とし、障害物があれば回り道するのです。
<それは違いますよ、ジョーンズさん>
たとえ丁寧に言われたとしても、自分の間違いを指摘されるのが好きな人はいません。そして、人は自分の間違いを示されることを最も忌み嫌います。それが、ただの他人の意見であれば、たとえ怒っていたとしても、まだ我慢できます。しかし、間違いを示されて怒らないひとはいません。その怒りがプロスペクトのものであれば、クロージングに向けて、面倒なことになります。
ある日、私は新人のトミーが地元の薬剤師に4000ドルのキャンピングカーの売り込むのを手伝いに出かけました。製品は新型で、在庫もありましたので、クロージングは間近だと、彼は思っていました。
まず、我々はプロスペクトが受けてくれそうな雰囲気であることを感じ取りました。彼は買う気になっていました。後はペーパーワークを終わらせて、小切手を受け取れば良いだけでした。しかし、結果的に、そんなに簡単ではないことがわかりました。
彼は、大きな薬局のオーナーでした。オーク製のドラッグカウンターが左右に広がり、その後ろの1段高いところに彼は座っていました。彼の時間が空くのを待っていたときに、一人の男が彼に歩み寄って、ハイウェイ11への行き方を聞いてきました。
「簡単に行けますよ。店からハイウェイに出たら左に曲がって、信号を3つ越えてから左に曲がってください。4ブロック進めば、右方向のハイウェイ11を示す標識が見えます。だいたい7分から8分...」
そこで、トミーが口をはさみました。「ジョーンズさん、ハイウェイ11に、もっと簡単に行ける方法がありますよ。グローブ・ロードに出ればいいんですよ。そこまでは、半マイルで、左に曲がって、3ブロック進めばグローブ・ロードとパイン・アベニューの交差点があるので...」
「ああ、その方が少し近道だが、道がややこしいから、迷われてはいけないと思ったんだよ。」
「そんなことありませんよ。これが一番簡単な行き方です。簡単な地図を描いてあげますよ。実は私はハイウェイ11沿いに住んでますから...」
客対応が終わった後、彼は我々が待っていた店頭のところに現れ、注文をする前に、他社のキャンピングカーも検討したいので、後日連絡すると告げられました。
何を言っても、彼の考えが変わることはありませんでした。私とトミーがどう頑張っても、彼の意志は強固でした。彼は決心していました。他のキャンピングカーも見てみるのだと。その態度はガラッと変わってしまいました。
<ジョーンズ氏が間違っていたのではなく、トミーが間違っていた>
会社への帰り道、トミーは完全に落胆していました。
「どうしてか理解できません。あと少しで注文をもらえる所まで来ていたのに、急に気が変わったんですから。ひどいですよ。こちらを期待させて、引きずり回しておいて...」
ここで私は、駆け出しの営業マンの彼が、同じ失敗をしないように、1つ教えてやろうと思いました。
「君を引きずり回してから、気が変わったんじゃない。君がまずい扱いをしたんだよ。自分自身が引き起こしたことなんだよ。トミー、ダメになったのは他のだれのせいでもない。君が間違っていた。会社にもどってから、正しい売り込み方の基本を説明してあげるよ。」
「私が何をしたっていうんですか。彼の気が...」
「会社にもどってからだ、トミー。」
帰りの道中、彼はずっと、うなだれて考え込んでいました。薬剤師が汚い手を使ったとぶつぶつ言いながら。会社に着くと、私は彼を自分の部屋に入れて椅子に坐らせました。
「トミー、私から『注文が取れなかったのは、君の失敗のせいだ、君が間違っていた』と言われたとき、どう感じた。正直に自分が感じた通りのことを教えてくれ。」
「そうですね、嫌な感じがしました。あの薬剤師に対して腹を立てていたところに、私が悪いようなことをおっしゃったので、その事にも腹を立てました。私の落ち度ではありませんよね。」
「説明するよ。君は腹を立てただろ。彼に対して腹を立てた。だが、もっと重要なことは、君が私に腹を立てたことだ。注文を取れなかったのは、君のせいだ、君が間違っていたと私が言ったからだ。」
「それはそうでしたが、それが何か...」
「トミー、思い出してみなさい。君は、あの薬剤師に何を言った。」
「そういえば、彼の言っていることが...違うと...言いました。彼は私に腹を立て、やり返したんだ。出来るたった一つの方法で...他を見て回ると言って、キャンピングカーを買うことを拒否したんだ。彼は、最後に笑うのは自分だということを見せつけたんですね。自分の道案内は間違っていたかもしれないが、大口をたたく私から買うのをやめることで仕返しをしたんですね。」
<自分の意見は自分の中にとどめておく>
次のタブーは、「間違いの指摘」と似ていますが、態度がはっきりしないプロスペクトにクロージングかける時は特に、「間違いの指摘」よりも、もっと失敗を誘います。
自分の大事なプロジェクトが批評されたり、自分の大事な意見を否定されるのを好む人はいません。私は苦労してこのことを学びました。これが分かるまで、どれだけ多くの商談に失敗し、多額の利益を失ったかわかりません。
私はかつて、市場のどの製品よりも高性能なバッテリーのフランチャイズ(一手販売権)を持っていました。
当時、私は海軍基地に売り込みをかけていましたが、そこでは、船、クレーン、自動車などに使用される何千個ものバッテリーが消費されていました。調達部の購買担当官は4つのユニットにバッテリーを1個ずつ取り付けて、3か月持ちこたえれば、すべてのサイズ用に、合計1000個発注すると言っていました。政府の指値は厳しいものでしたが、もし、バッテリーが持てば、大きな利益をだすことが出来ましたし、実際、間違いなくそうなるはずでした。
3か月後、彼から連絡があり、バッテリーは問題なく機能しており、切れそうな兆候もないので、約束通り1000個分の契約手続きに来るように言われました。
運の悪いことに、その日、地元の製鉄所でストライキをやっており、新聞は所内でピケ
が張られ、交渉や小競り合いしている様子を報道していました。
その担当者が契約手続きの準備のため、事務所の奥に行っている間、私はストライキの最新情報の記事を読んでいました。そして、彼が管理職で、労働争議に反対に違いないと思った私は、受注を決定的にするための準備をしていました
彼が戻ってくると、私は労働組合や彼らの主張すべてに対して、批評を開始しました。
私は、彼らがいつもお恵みをねだってばかりで、会社側は言いなりになっており、政府は規制を強めるべきで、(話しながら、彼は間違いなく、永久に私の味方になったのだ、と思っていました)、場合によっては強硬措置が必要だとも言い放ちましたが、彼は座ったまま聞いていました。
私から10分間、労働組合についての意見を聞いた後、彼は「発注書類が出来上がりそうなので、ちょっと見てくる。」と言って席を外しました。
数分後、彼は戻って来て言いました、「すまないが、細かいルール変更があって、それを忘れていた。役所のやることだから分かってほしい。この取引を完了するのに、あと数日かかりそうだ。また、電話する。」
私は、嫌悪感を覚えながら帰途につきました。労働争議について、正しい立ち位置で話ができたと思い、受注できる確信がより強くなりました。
<間違った態度 = 失注>
数日後、海軍基地から連絡がありました。「購買担当官として残念な知らせだが、自分には、どうにもならない事情により、基地で使用されるバッテリーを貴社へ発注することが不可能になった。」とのことでした。
後から分かったことですが、海軍基地は工場にコンタクトして、バッテリーを直接発注したのです。それで、私の利益のほとんどは無くなってしまいました。フランチャイズを持っていましたので、工場は私にお金を払ってくれましたが、直接買われたおかげで、600ドルが飛んでしまいました。納品と設置は、私の会社がしなければなりませんでした。
これも後から学んだことですが、政府の労使問題の扱い方は、民間とは違うということでした。
役人はストライキをすることが許されていないので、苦情処理委員会は労働者代表の3人と管理職代表の3人で構成されており、海軍士官が議長を務めていました。労働者代表のうち1人は、管理職の階級から選ばれていました。それが誰だったか、お分かりですよね。
思い出してください。私は、意見を聞かれてはいませんでした。自発的でした。それが、間違いだったのです。そもそも、意見を言ったこと自体が、間違いだったのです。反対側に立ってしまったことではなかったのです。
私がどう考えているかなど、誰も聞いてはいなかったのです。どうでもいいことでした。自分の意見を外に出さず、その問題については無知であるとさえ言っていれば、楽勝だったのです。
後日、この話を造船所の従業員から聞いたところ、工場からの直接買付は、購買担当官の上司の考えだったようです。その担当官は、まったくそのような考えを持っていなかったはずです。しかし、彼は地元のフランチャイズ店から買うべきだと進言しようと思えばできましたが、明らかにそうしてくれなかったのです。

