1人の営業マンより2人の営業マン
<1人で客を見送ると、商機を失う>
ジェリーという新任のセールスマネージャーがやって来ました。彼の配属の一週間前に副社長がこの人事について、正しい判断だったことを祈ると言いながら、我々に伝えてくれました。
その会社は保守的で営業成績へのプレッシャーが少ない営業代理店でした。早口のやり手である彼のやり方が、成功するかどうか不安に感じていたのです。
その心配は無用でした。彼は既存のセールスの手順をすぐに自分のものにし、顧客に対しても相手の人格にあった人間に、見事に変身して、取引を穏便に進めることが出来ました。常に自分を見つめ、自然体で精力的に動き回り、3ヶ月もたたないうちに彼の営業部隊は立派な成績を上げていました。
彼の着任の翌週、受付の机にリーガルパッドが置いてありました。
それは、きちょうめんにコラムに分けられ、顧客名、住所、どの営業マンが対応したか、来訪目的などが書かれていました。
営業会議の中でジェリーは我々に訪問客のリストを作り、客が帰る前に自分以外のもう1人の別の営業マンが対応するように指示しました。それが出来なかったのなら、その理由を書くようにとも言いました。このぶっきらぼうな言い方に、ほとんどの部下が不快な気持ちになりました。
もし、誰かが何等かの情報を求めて訪問して来たのであれば、その人は大事なプロスペクトである。彼が潜在的な顧客であるからには、店を出る前にもう1人別の営業マンも対応するべきだということです。
最初、その指示は無視されました。
ジェリーは次の営業会議の中で、「ダブル接触」をさせずに、客を見送ったものには10ドルの罰金を課すと明言しました。
月曜日にそう言って彼が出て行った後、締日である土曜日の午後1時までに我々が売り上げた金額は先月のトータルとほぼ同額になりました。
ジェリーと過ごした2年間で多くのことを学びましたが、この「ダブルチーム」のことが最も重要で貴重な教訓でした。
さて、ダブルチームクロージングと前章で紹介されたタッグチームクロージングの違いは何でしょう。ほとんど同じことなのですが、一つだけ違うことがあります。それは、タッグチームクロージングでは普通、とっさの判断でクロージング上の障害を克服するために助けを求めるという点です。
ダブルチームクロージングは二人で組むことがプランされたクロージングテクニックです。二人でクロージングを開始します。あなたの得意分野ではないという理由で1人での対応が難しい、あるいは会社のルールによって二人でクロージングすることが決められているといった場合に用いられる手法です。
効果的なダブルチームクロージングでは、うまく実施されたタッグと同様、顧客は二人の営業マンによる集中的な営業努力にさらされますので、一人での営業より、早く容易に彼を屈服させることができるのです。2つの頭は1つの頭にまさるという格言通りです。
<キャメル一つ>
ダブルチームの非常に優れたアクションを、こともあろうにドラッグストアで体験したことがあります。
私は上司とともに著名な成功哲学者であり、セールスカウンセラーのナポレオンヒル氏の講演会に出席していました。講演会場を出てホテルにもどる途中、上司のジャッキーがタバコ切れになりかかっていることに気づいたので、近くのドラッグストアに入っていきました。
カウンターの後ろには、御用を伺う中年の女性がおり、そばに若者が立っていました。
「フィルター付きのキャメルをください。」と言ったところ、その女性は横の若者に「フィルター付きのキャメル」と指示しました。
その若者が持ってきて見せたのはキャメル1カートンの箱でした。
「私が欲しいのは、ただ...いや、まあいいや。マッチもください。」
「マッチ。」彼女はまたもや若者に対して肩越しに指示しました。
「お客さん、今週はスペシャルオファーがあるんですよ。お見せするから、ちょっと聞いてくださいよ。」と言って女性がわきに除けるともう一人の若者がその「スペシャル」を見せてくれました。それは、ライターと燃料大びん二本分と発火石ひと箱でした。
「このライターはブランコ製で一生ものですよ。それと1年分の燃料と発火石が、全部まとめてワンセットです。」
「ライターには、もう燃料が入っていて、発火石も付いているから、あとは取り出して使うだけですよ。」と彼女は言いました。
その店を出るころにジャッキーは8ドルほどお金を使っていました。(注釈 1960年代の物価は2016年の約10分の1以下)我々は部屋にもどるまでの帰り道、彼女が店のオーナーだったのか雇われだったのか談義しながら、ずっと笑いが止まりませんでした。
タバコ一箱35セントであったものを、彼はその20倍もの金額の買物をしたのです。
これは偶然で起きたことではありません。あの二人は計画され、完全に息の合ったダブルチームを編成し、計り知れないほど売上を伸ばしていたのです。
タッグチームでのアプローチと違い、(タッグチームに当然使うことが許されている時間をかけるほど、もったいぶった売り方することは滅多にしないでしょう。)彼らは我々が店に入った時には、効果的なダブルチームでの売込みを成功させるための練習を済ましていたに違いありません。
私の推測が間違っていなければ、我々の前に入った客も後に入った客も同じ扱いを受けていたはずです。彼らは明らかに買ってくれと頼まなければ売れることはないという立場に立って営業をしていました。このことは覚えておくとよいでしょう。
彼らは、ただ、1人より2人の方が良い仕事ができるということを示してくれたまでです。
可能ならばダブルチームでセールスした方が良いという事実は、疑いようがありません。
<マイクから一言>
ここでの教えは、特に、店舗販売の場合、一人で最後まで対応するより、一回あるいは数回交代して互いの役割を演じたり、交代トークをするようにプランされた売込みは、非常に効果があるということです。店舗での営業をやっているのなら、日々、不特定の客が来るのですから、どこで交代すると、最も効果が上がるのかを、仕事をしながら試行錯誤して、最適なパターンを見つける努力をしましょう。店舗販売の基本として強調されているのは、笑顔や、言葉使い、礼儀正しさ、確認すべきことを確認するなど、最適の商品配置、店長権限でのキャンペーンなど、いろいろと大事なことがありますが、プランされたダブルチームのテクニックも引き出しの中に持っておいてください。


